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2020年4月 1日 (水)

Science~緑茶由来カテキンを応用した新規骨再生材料開発~⑤

続き:

 

6. 細胞播種担体としての応用

 幹細胞を用いた治療はいまだ歯科臨床に届いているとは言えないが、唇顎口蓋裂やがんなどで生じる広域骨欠損にとって細胞応用は有望な選択肢となることは間違いない。ここでは広域骨再生への応用を目指した幹細胞と、vhEGCG-GSの併用に関する知見を紹介する。

 近年筆者らは、生体外においてEGCGが単独でも脱分化脂肪(DFAT)細胞の骨芽細胞分化を誘導する知見を得た。本結果は、多能性幹細胞・前駆細胞を用いた骨再生治療において、EGCGを含むvhEGCG-GSが有望な細胞播種担体となりうる可能性を示していた。この背景をもとに、脂肪由来幹細胞(ADSC)やDFAT細胞とvhEGCG-GSの併用による骨再生実験を行った。実験モデルとしては、イヌなどの大型動物での実験が望ましいが、同材料が持つ効果のスクリーニングを兼ねて、ラットに先天的に存在する下顎正中部の欠損を用いた。同モデルは、頭蓋冠骨欠損モデルと異なり、先天的に骨が欠損している部位であることから、より骨再生が困難なモデルである。事実、埋入物がない場合、埋入8週においても骨形成はほとんど認められない。一方、vhEGCG-GSとDFAT細胞やADSCを併用して埋入した群では、vhEGCG-GS単独や真空熱処理ゼラチン単独、真空熱処理ゼラチンとそれぞれの細胞を同時埋入した群よりも優れた骨形成を認めた。

 生体外においてそのメカニズム解明の一端を試みたところ、細胞は真空熱処理ゼラチンに比べてvhEGCG-GSに有意に接着。材料学的評価にて、材料の水に対するぬれ性やゼータ電位を調べたところ、真空熱処理ゼラチンが疎水性を示したのに対し、vhEGCG-GSは親水性を示し、ゼータ電位などでも差が認められた。細胞接着性とぬれ性、ゼータ電位の関係は複雑ではあるが、細胞の接着を促すタンパク質の吸着挙動に影響を及ぼしたと考えられる。また、vhEGCG-GS上では、リン酸カルシウムの沈着が促進した。

 リン酸カルシウムの沈着には、局所的なリン酸やカルシウムのイオン濃度の変化が関与する。リン酸やカルシウムそれ自体が幹細胞の骨芽細胞分化を促進することが知られており、担体周囲のイオン環境の変化は骨再生に影響をもたらすと考えられている。vhEGCG-GSお数ある材料学的性質において、生体内でどの因子が強く影響を与えたかは、いまだ不明である。しかし、以上の結果は、vhGCG-GSは細胞播種担体として使用された場合、EGCGが持つ薬理作用だけでなく、担体周囲のイオン濃度の変化や、担体表面性状などの様々な性質を変化させ、骨再生を促しやすい環境を構築したと推察された。

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