外資がこじ開けるカジノ市場 ③
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■ カジノ管理委員会の新設
2019年の臨時国会は「桜を見る会」で紛糾したが、陰ですんなり通った事業があった。カジノ管理委員会のトップ人事である。委員長に元福岡高検検事長の北村道夫氏、委員に元名古屋国税局長の氏兼裕之氏、元警視総監の樋口建史氏ら計5人が選ばれた。検察、国税局。警察など権力組織のOBを骨格に据えたのだ。
アジアで国際金融に携わる銀行幹部は「カジノは犯罪組織が資金洗浄を行なう場で、タックスヘイブンの入り口でもある」と言う。近年、勃興するシンガポールとマカオがいい例だ。シンガポールは「東洋のスイス」と「明るい北朝鮮」を併せ持つ都市国家とも。スイスのように海外の資産家が旅行者を装って訪れ、タックスヘイブンに資金を移す「プライベートバンキング」の舞台。表面はモダンだが、強権政治によって秩序は保たれている。
マカオは中国の高級官僚や富裕層が博打に興ずる遊び場。北京政府は国内で賭博を禁じながら、マカオを「ガス抜き」に利用している。北朝鮮がマカオの銀行を通じて資金取引していたのも、マカオの特殊性を物語っている。
賭博には闇の勢力、イカサマ、脱税などカネをめぐる犯罪が絡みやすい。公認博打が暴走しないよう目を光らすのがカジノ管理委員会だ。国家公安委員会や公正取引委員会と同格で、100人規模の役所として2020年1月に発足。公務員の定員が厳しく管理され、人員削減されているというのに、日本でひと儲けを企てる外資カジノを迎えるために、役所をひとつ用意する。「世界でもっとも厳しい規制」と言いながら、上限面積さえ業者の一言で撤廃される現実。—懸念されるのは警察国家の強化だ。反社会的勢力やマネーロンダリングを口実に、中央・地方カジノ団体に警察が人を送り込むだろう。パチンコ業界は「暴力団対策」で警察の縄張りに入った。元警視総監をカジノ管理委員会に押し込んだように、安倍政権で力を警察官僚の拡張・拡大は要注意だ。
去就が注目されている横浜市では、推進へと舵を切った行政に対し、市民が住民投票で対抗する。住民投票実現には6万人余の署名が必要だが、署名集めができる「受任者」がすでに1万2800人に達した(2019/12/11現在)。世論調査では大多数が「カジノ反対」だ。
カジノ資本は、儲けた資金をロビー活動に注ぎ、大統領まで取り込んだ。首脳会談で「圧力」がかかり、国会では与野党議員が一本釣りされる。着々と進む「カジノ開放」を市民は阻止できるか。日本の民主主義が問われる一場面でもある。
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