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2020年4月26日 (日)

原子力ムラの癒着と不正その責任を問う ③

続き:

工事の高値発注は特別背任

 告発事実の第一は、工事日の高値発注は会社と消費者への背任行為にあたるというものだ。特別背任とは取締役の地位にあった者が、その任務に背いて、自己もしくは第三者の利益を図り、または会社に損害を加える目的で、財産上の損害を加えた場合に成立する(会社法第960条第1項)。

 関電の取締役には、なるべく安くかつ適正な工事発注を行なう義務がある。適正な対価よりも高値で発注することはその任務に背くことである。関電は、2014年から2017年に、高浜原発と大飯原発の関連工事を含む計113件を吉田開発(森山氏が元顧問)に発注していた。原子力事業本部から吉田開発への直接発注は22件ゼネコンなどを通じた間接発注は91件である。発注の総額は51億円に上る。

 直接発注22件のうち、指名競争入札が12件、特命発注による随意契約が10件。特命発注では、工事費用の水増し発注が簡単にできるてしまう。

 関電の内部報告書は、特命発注された理由について、「近隣場所での施工実績がある」「地元対応にも精進している」などと説明している。しかしフリージャーナリストの齋藤真氏による『関西電力「反原発町長」暗殺指令』(2011年12月、宝島社)には、高浜原発のある高浜町の町長で、森山元助役と対立していた今井理一町長(インタビュー当時)の発現として「原発(引用者注:原発のことを指す)を運営する関電の(高浜)町に対する強引なやり方というか、一部の者だけに利益を得させるようなやり方に、物申したりはしてきたんや」(148p)、「K(引用者注:関電の元若狭支社副支社長)というのとは、ことごとく反目(対立関係)になったわ。Kのやり方は、実際一部の者たちだけが利益を得るだけで、どうにも町のためにならんことが多かった。関電の原発の現場担当者ともなれば、そのあたりのさじ加減はいくらでもできる」(150p)など、関電が高浜町の業者のうち一部の業者だけに工事発注がなされている状況が、現職町長の口から生々しく語られている。

 関電の内部報告書によると、関電の契約発注は指名競争を原則としているが、①若狭地域における取引先選定(指名)に当たっては地域共生、地域振興の観点から地元企業(立地町に本店を構える会社)を優先しており、この段階で優先される地元業者の候補が二社(吉田開発ともう一社)であること、②指名競争においては最低価格自動落札方式ではなく、最安値の見積金額を提出した業者との間で、契約金額をはじめとする契約条件について交渉し、合意に至った場合には契約になるとしている(内部報告・9p)。

 しかし、実際には、森山氏が顧問を務めていた吉田開発や、兵庫県高砂市に本拠を置き、森山氏が相談役を務めていた柳田産業にも多額の発注がなされている。関電は森山氏に対して「工事物量や工事概算額等の規模感を記した資料を手渡すなど」し、吉田開発、柳田産業へ情報を提供し、関電と契約締結しやすいように便宜を図っていたと考えられる。

 吉田開発の関電からの売上高は、2013年の約3億5000万円から2015年に10億円を超え、2018年に約21億8000万円に達しており、約5年間で6倍にも急増している(2019/10/02、時事通信)。

 関電の内部報告書には、役員幹部ら20人の氏名や職位、金品の内容などが明らかにされている。この事件は、金の流れはほぼ完璧に解明されているのである。また、森山氏を介さずに、業者から直接、金品を受け取った者がいることもわかってきている。これは、関電が発注した原発関連工事費用が、業者から直接、関電の役員・幹部らへ還流していることを示している。

 高値発注は、水増し分の工事代金分の損害を会社に与え、また吉田開発などの利益を図り、資金還流により取締役らが利益を得る目的であった。これが特別背任でなくて何なのだろうか。

 

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