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2020年5月14日 (木)

デジタル教科書は万能か? ①

辻 元(上智大学理工学部情報理工学科教授・数学者)さんは述べている。コピーペー:

 政府は2019/12/05、教育用ICT(情報通信技術)環境の整備拡充などを盛り込んだ総額26兆円規模の総合経済対策を閣議決定した。

 その中で、義務教育課程である小中学校への大規模な整備が盛り込まれた。

 整備の目標について政府は「全学年の児童生徒一人ひとりがそれぞれ端末を持ち、十分に活用できる環境の実現を目指す」としています。

 政府は教育ICT化を進める意向ですが、ICT教育、デジタル教科書は果たしてどれほどの効果があるのか?

 ここでは情報量と教育との関係を論じたいと思います。

1 教育のICT化が急がれる理由

■ パソコン利用が少ない日本の子ども

 教育のICT化を政府が急ぐ理由は何でしょうか?

 その1つの理由と思われるのは日本の子供のコンピュータスキルが国際的に見てそれほど高くないことです。

 OECDの国際学力調査「PISA2018」の結果によると、日本の生徒(15歳)の読解力は15位になっている。前の2009年の調査時の8位から大幅に低下したことで、「PISAショック」と騒がれました。これは2015年度よりPISAが筆記型からコンピュータ使用型に変更されたことにより、回答方法に不慣れな結果起きたと分析されている。

 実際、日本の子どもパソコンの操作に不慣れなようです。PISAの調査では日本の15歳の子どものノートパソコン使用率は2018年においても35%に留まりますが、→これはOECD中の最下位だ。確かに日本の子どもはパソコンに触れる機会が少ないかも知れません。

 しかし、PISAが筆記型からコンピュータ使用型に変わったために日本の子どもの読解力が低く出たというのは本当だろうか。それが詳しく検証された形跡はないのです。実際に日本の子どもの読解力が低いということはないでしょうか。

■ AI人材25万人計画

 もう1つの背景として、AI人材を育成して日本の国際競争力を高めようという思惑もある。

 2019年、政府は「AI人材戦略」を策定し、2025年には年間25万人のAI人材育成計画を立てました。その背景にはAIの利活用に関し、アメリカや中国の企業などによる覇権争いが激しさを増していますが、我が国は後れをとっている実情があります。現在、5Gで先行する中国に対し、アメリカがファーウェイ排除に乗り出してIT覇権をめぐる米中の争いが激化していますが、日本の電機メーカーは蚊帳の外。それは日本のAI人材不足は深刻なのです。

 そこで政府はそのために小学生~高校生迄2人1台タブレット端末を使って授業を受けられる環境整備とともに、大学の優れたAIに関する教育プログラムを政府が認定する制度を設けるとしています。

 しかし、年間25万人という数は、大学生1学年の半数で、理系、保険系の大学生数18万人だけでは足りず、文系学生7万人もAI人材として育成するという相当無理なプランであることは否めません。

 そもそもAI人材の育成が最優先かという問題もある。前述のPISAの他、各種の学力調査によって、今の日本の子どもの読解力や論理力に大きな問題があることがわかってきています。AI人材を育成したいのであれば、十分な基礎学力をつけることが、先ず、必要だと言えます。

 学力とは正に学ぶ力であって、それが身についていなければ、こんな変化の激しい世の中についていくことは困難でないでしょうか。

 「大学でもっと役に立つことを勉強せよ」という意見をよく聞くのですが、少なくとも現在の大学生を見る限り、「役に立つことを自律的に勉強できる基礎学力」を身に付けるのが先決ではないかと思えるのです。

 では、ICT化がその基礎学力の向上に役に立つのでしょうか。これもいささか疑問があるのです。

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