Clinical 地域連携医療のための歯科医師に必要な栄養学 ③
続き:
3) 第3レベル:口の機能低下
口腔機能低下症で着目する点は低栄養だ。BMIや体重減少などの把握は重要。栄養アセスメントは栄養状態を客観的、総合的に把握して評価することである。なかでも栄養スクリーニングは、日常の歯科診療の際にできる栄養状態の評価として有効。栄養アセスメントには主観的包括的評価 (SGA)や客観的栄養評価 (ODA)がある。
栄養アセスメント:SGAとODA
1) 主観的な方法
.主観的包括的評価 (SGA:Subjective Global Assessment)
.簡易栄養状態評価表 (MNA-SF:Mini Nutritional Assessment Short Form)
2) 客観的な方法
.客観的栄養評価 (ODA:Objective Data Assessment)
① 身体計測値
② 間接熱量測定法
③ 生化学的検査値(尿、血液、免疫能)
④ 栄養補給の状況(栄養管理法からアセスメント)
SGAでは、特別な器具を使わずに簡単な身体測定、日常生活の様子や状態などで、包括的に栄養補給状態を評価する。診察では、日常生活の様子を観察。MNA-SFなどを待ち時間などに記入してもらうのも有効である。MNA-SF書式(ニュートリー(株) 略)。
ODAでは、身体測定以外に、上腕周囲長や上腕三頭筋皮下脂肪厚なども計測項目であり、これらはチェアサイドでも測定できる。さらに血液検査や尿検査などは臨床症状が出る前に変動するため、潜在的栄養障害などを把握することができる。またデンタルクリニックに簡易でも体重計があると有効だ。高齢者に問うと3年前くらいの体重を答えることもあるので、現在とは異なっていることが多い、実際にその場で体重計測したほうが正確。
BMIと健康の関係として、死因を問わず死亡率(総死亡率)が最も低かったBMIを基に、健康的であると考えて設定された表(後で述べる)。70歳以上になるとBMIの目標値は21.5であるが、75歳以上で20以下が増え始めたおり、低栄養傾向が認められる。今まで瘦せるように気をつけていた人が、急に食べて太るように言われるなど、「メタボ予防からフレイル予防」の急なギアチェンジに対応するのは困難である。
そこで第1、第2レベルの活動で変化への地盤を作り、第3レベルで個々の機能への対応と栄養評価となると考える。このレベルでは個々の機能に低下があっても、他の代謝による代償作用が働くため、明らかな機能障害が表に出てくることは多くない。しかし個々の機能練習は必要、その上で食事指導・栄養指導を行っていく。栄養指導は口腔機能管理の一つの項目となる。実際の栄養指導は食形態の工夫や日常の食生活で高栄養食品をとる工夫などがある。食べることは、日常の営みで、楽しみでもあるから、日頃の食品の中でいかに高栄養をとるかを工夫し、第3レベルでの高栄養剤の処方は、日常食品で摂取できぬ時に対応することが望ましい。
この頃の加齢の影響による摂食嚥下機能のフレイルの状態を Presbyphagia と言う。日本語では高齢による嚥下機能低下や老嚥と訳す。第4レベルである摂食嚥下障害になる前段階に位置する。やはり一般的に無症状で本人は無自覚であることが多い。つまり、脳血管障害等の急性疾患を発症した時や極めて体調が低下したときに、嚥下障害障害(Dysphagia)を呈したりする場合があるが、体調が戻ると嚥下障害障害は軽減し、嚥下機能低下(Presbyphagia)状態になる。このような場合 Presbyphagia の影響ですでに食品栄養バランスが崩れている場合があり、そこから摂取嚥下機能障害に至り、経口で必要な栄養量を摂取できず、栄養障害や脱水症状が早く出てしまうことが考えられる。
« Clinical 地域連携医療のための歯科医師に必要な栄養学 ② | トップページ | Clinical 地域連携医療のための歯科医師に必要な栄養学 ④ »
「日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事
- Report 2023 感染症根絶 ③(2023.11.28)
- Report 2023 感染症根絶 ②(2023.11.24)
- Report 2023 感染症根絶 ①(2023.11.15)
- Science 糖尿病における歯周病 ~基礎研究からその問題点を考える~ ⑦(2023.11.11)
- Scince 糖尿病と歯周病 ~基礎研究からその問題点を考える~ ⑥(2023.11.08)