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2020年5月 4日 (月)

内の目外の目 第209回 粧うから口腔ケアを考える ①

池山和幸(株式会社資生堂社会価値創造本部マネージャー)さんは、「高齢者に対する新たなアプローチを述べている。コピーペー:

はじめに

 昨今、口腔と全身の健康との関連性が明らかになる中で口の健康に対する国民の関心が高まっている。例えば歯周病は、糖尿病、循環器系疾患、誤嚥性肺炎、関節リウマチ、糸球体腎炎、心内膜炎、認知症などにも影響しており、歯科従事者は関連する各臓器への関心が高まっているのではないだろうか。

 ここで今一度、健康とは何かを考えてみたい。以下は、1947年に世界保健機関 (WOrld Health Organization:WHO)が提唱した健康の定義である。

 

 「健康とは、単に疾病がないということではなく、完全に身体的・心理的および社会的に満足のいく状態であること」

 

 本稿では、口を中心として、口の外――顔全体、そして身体、さらには生活・社会に視点を向け口腔ケアを考えてみたい。その際のアプローチ手法として、近年、介護施設や医療機関などでリハビリテーションや認知症ケアとして活用されている化粧療法を用いた口腔ケアを紹介する。

整容としての化粧

 介護・看護の領域において、化粧は、ADL (Activity of daily living : 日常生活動作)の中の「整容」に分類される。整容とは、容姿(姿・形)など身だしなみを整えることを言い、具体的な項目としては、口腔ケア(歯磨き等)、手洗い、爪の手入れ、洗顔、整髪、髭剃り、化粧(主 スキンケア・メイク)とされている。

 高齢期には、年齢や心身機能の影響で閉じこもりがちになり、他者との交流頻度が減り、徐々に整容に対する意識も低下していく傾向にある。

 心理学的にスキンケアは、鏡を通じて、自分への関心を高める対自的機能、メイクはきれいになることで他者を意識する対他的機能をもつと言われている。化粧療法はこれらの機能を用いて、口に対する関心をもつきっかけづくりや口腔ケアへの取り組み意欲の向上につなげていく。そして、整容としての役割(化粧)を通じて、自信や自分らしさを維持、取り戻すきっかけにもつながり、心理的・社会的に満足のいく状態、つまり健康へと導くことも期待できる。

 

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