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2020年5月15日 (金)

デジタル教科書は万能か? ②

続き:

■ 情報量と教育効果

 教育のICT化の背景には、デジタル機器の普及により情報を得ることが容易になり、必要な情報を探してそれを活用することが求められるようになったことがある。しかし教育効果を上げるには、単に情報を得るだけではなく、それを整理して活用することが必要。

 ICTは触れることことのできる情報を整理し考察するといった、思考プロセスの妨げにはならないでしょうか。情報量と教育効果の関係について考えてみたい。

 

◉ 教育のICT化は学力を向上させるのか?

 教育のICT化やデジタル教科書の利点は、動画やインターネットの活用により、多くの子どもがつながったり、子どもたちが大量の情報に接することができることにある。また政府の「AI人材戦略」を見ても、子ども中から情報活用能力を身に付けさせたいということがあるようだ。実際、政府の「AI人材戦略」では、

 (1)情報活用能力は、情報を手段として活用、問題の発見や解決、自分の考えをまとめられるようになるために必要な資質・能力

 (2)未来を切り拓いていく子供たちには、情報を主体的に捉え、新たな価値の創造に挑んでいくことがますます重要。

 (3)スマホ・SNSの普及に伴い、トラブルも増大。情報技術が進化していく時代にふさわしい情報モラルを身に付けていく必要あり。

 (4)情報技術を操作し、情報を共有することが社会生活の中で当たり前になっている。小学校段階から文字入力やデータ保存などの技能習得していくことを求める。

 (5)身近なものにコンピュータが内臓され、生活が便利になっていることを理解して、どの職業に就くにもプログラミング的思考は普遍的に求める。

 (6)社会で生きていくために必要な資質・能力を育むためには、学校の生活や学習においても、日常的にICTを活用できる環境整備していくことが不可欠。

 しかし、情報技術の活用と教育効果の関係には十分な研究が行われているとは言えない。

 それどころか、教育のICT化と学力は無関係ではないかと思わせるデータもある。

 教育のICT化で見ると、授業環境の先進度(電子黒板やプロジェクターなどの整備率)で1位は、佐賀県87.1%、最下位は秋田県の17.3%だ。佐賀県は教育ICT化の先進県として有名、たとえばデジタル教科書の整備状況は全国第1位でほぼ100%です。ところが2019年の全国学力調査で秋田県は、県別ランキング1位の正答率69.33%となった一方、佐賀県は62.33%で43位でした。デジタル教科書や電子黒板の導入が学力向上につながっているのか、疑問を感じさせる結果です。

 もちろん、これだけの情報で教育の効果無いと言えません。しかし、韓国のデジタル教科書の導入後の調査を見ても、デジタル教科書学生の興味を引くことはあっても、デジタル教科書の導入が学力を向上させるというデータはないようです。

 実際、「児童生徒が十分な思考をせずに、マルチメディアの刺激に対して反応するような学習活動は、自分で考える力を低下させる」「算数は思考を要する学問で、刺激的な反応を要するデジタル教科書は学習に適さない」のように、算数のデジタル教科書と思考力との関係を問題視する意見がある。さらには、「デジタル教科書が紙媒体の教科書を基につくられていて、固有の特性がない」「集中させることができず、学習のためにはならない」という意見もある。

 デジタル機器の導入は時代の要請だという面あるが、現在のところ、デジタル機器がたしかに学力向上させるのに役立つという研究結果は存在しないと思う。実際、効果の検証は行われているが、はっきりと学力向上が見られたという報告はなし。たとえば佐賀県武雄市では「スマイル学習」と呼ばれる生徒1人1台のタブレットPCを使った大規模なICT教育の導入実験が行われましたが、学力への明確な効果は得られなかったという結論になっている。他にもデジタル機器導入の実践実験は数多く実施されていますが、学力への効果は明確に認められているとは言えない。

 

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