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2020年5月29日 (金)

GIGA スクール構想の行方をめぐって ①

前川喜平(現代教育行政研究会代表)さんは「世界 5」で述べている。コピーペー:

 2019年度補正予算で政府が開始した「GIGAスクール構想」。その下敷くは、2019年8月2020年度予算概算要求で文科省が打ち出した「GIGAスクールネットワーク構想」だ。全国の学校に高速大容量通信ネットワークを整備しようとするものだったが、唐突だったので全国の学校関係者は「何それ?」と思っただろう。

「GIGA」は「Global and Innovation Gateway for All」の頭文字だそうだが、データ容量の単位の「ギガバイト」に引っ掛ける為にむりやり造語した感がある。

 2019/11/13、の経済財政諮問会議では安倍首相が、学校の情報端末について「1人当たり1台となることが当然だということを国家意思として明確に示すことが重要」と発言。「国家意思」とは大仰な言い方だが「国の特定財源で整備する」という意味ならわかる。後述するように、学校のICT(情報通信技術)環境整備が進まないのは自治体の一般財源で行うところに隘路があるからだ。2019/11/19、には西村経済財政政策担当大臣が「Society 5.0時代を担っていく人材の育成にふさわしい環境整備を速やかに整える」と発言。2019/11/22、には萩生田文科大臣が2019年度補正予算に計上する方針を示し、2019/12/05、に閣議決定した経済対策で、学校の高速ネットワーク整備に加え、2023年度までに小中学校の児童生徒1人1台の端末を整備することや、デジタル教科書の普及、教員研修、ICT支援員の配置などの方針が示された。「公正な個別最適化学習」や「校務の情報化」を目的とする総合的な学校ICT化構想となり、名称が「GIGAスクール構想」になった。

 「Society 5.0」という言葉は2016年に政府が決定した「第5期科学技術基本計画」に出てくる。内閣府によると、「サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会」なのだそうだが、「第4次産業革命」とどう違うのか前川には分からぬ。「社会的課題の解決」の中には「富の再配分や地域間の格差是正」も含まれ、「イノベーションで創出される新たな価値により、地域、年齢、性別、言語等による格差がなくなる」というのだが、どうしてそうなるのか、これも前川には分からない。

 「個別最適化学習」は「adaptive learning」と同義で「学習者の進度や理解度に応じて、個別に最適化した学習内容を提供すること」だという。「学習者に学習内容を適用させる」ように聞こえるが、その本質は「学習内容に学習者を適用させる」ことだ。従来の「個に応じた指導」や「習熟度別学習」とあまり変わらない。ICTを活用した個別学習に、一斉授業の弱点である「落ちこぼれ」や「吹きこぼれ」を減らす効果があることは間違いないが、その学習のコンテンツは教育を提供する側がAIを利用して決めるのであって、学習者が主体的に選択するのではない。「公正な」という言葉を文科省が加えたのは、子どもを学力で差別したり教育の機会均等を損なったりするものではないという言い訳だ。

 「個別最適化された学び方を世界中から広く選べるようになる」という意味で「学習の自由化」という言葉も使われている。確かにICTは主体的な学習の重要な手段だ。そこで必要なのは、フェイクも含めた大量の情報の海の中で、情報に溺れることなく、情報のウソ・本当を見極め、価値ある情報を学び取り、主体的な学びを進めるための一種の「航海術」だろう。それは実証的・合理的な思考力や科学的精神そのもので、従来の学校教育が追求してきたものにほかならない。

 科学・技術・ものづくり・芸術・数学の英語の頭文字で造語した「STEAM」は、「文理融合の課題解決型教育」だというが、これまで学校現場で取り組んできた「探求型学習」「学科横断的学習」と何ら変わらない。「アジャイル型学習」は「実践の試行錯誤の中から学ぶ学び方」のことだそうだが、それは幼児が遊びの中から学ぶ学び方と同じであり、「体験型学習」や「learning by doing」との違いがあるとは思えない。むしろ古来の学びの本質とも言えるものだ。乱発される新語や造語には惑わされないようにしよう。

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