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2020年6月20日 (土)

スーパーシティ構想と国家戦略特区 ③—<1>

続き:

■ スーパーシティ構想の何が問題か

 政府がスーパーシティを強く推進する一方、住民の生活や地域のリスクやデメリットについては十分に議論されていない。以下に主要な問題点を挙げながら考えてみよう。

1 個人情報は適切に保護されるのか

 スーパーシティ構想の「肝」は、国や自治体、企業、個人など、異なる主体が保有するデータであることはすでに述べた。例えば、国は国民の年金納付や納税、介護や医療に関するデータを保有している。地方自治体も各人の住民税等の納税、住民票や戸籍、教育、水道など公共サービスの利用状況等、多くの情報を有している。企業はさらに多様な個人データ――金融機関であれば預貯金額、電子決済企業であれば購入履歴、さらに IT 企業はインターネットの閲覧履歴、スマホの位置情報を通じた行動履歴などを保有する。これらの個人情報は、国、自治体、企業が各法令に基づいて適切に管理することが定められており、個人データを勝手に提供しあうことはできない。

 スーパーシティ構想では、この垣根を取り払い、事業主体となる「国家戦略特区データ連携基盤」事業者が必要なデータを集めて管理・活用する。法案の条文上では、データ連携基盤事業の実施者は、国や自治体にデータの提出を求めることができる規定が盛り込まれている。

 集められる個人情報は、個人が特定できないよう加工されたビッグデータとして収集される場合もあれば、個人が特定できる形のまま提供されるケースもあり得る。あるいは街中に設置されたカメラで、人や車の交通量を把握する空間データの収集も考えられる。

 より具体的な事例を通して考えてみよう。

 A市では、タクシー台数も減少し、料金も高いことから病院への通院を断念する高齢者が多い。そのためA市はスーパーシティ構想の下、①高齢者の通院のため、市民の車を活用したボランティア・タクシーを導入(配車アプリによる手配・決済電子化)。支払手段として、ボランティア活動によってポイントが貯まり、市からも個別に地域電子通貨を発行。その他の行政サービスの支払いなどとも連携。さらに、②通院予約や遠隔医療も活用し、地域ケアとボランティア・タクシーの配車システムを連動させる、という計画を立てたとしよう。その場合、「交通」「医療」「電子決済」というメニューが事業に導入されることになる。

 そこで必要となるのが、データである。データ連携基盤事業者は、病院や介護施設からは個人の健康データや病院予約データを、自治体からは高齢者の在住地域の健康状態や要介護度等の情報などの提供を求めることになる。市民タクシーの運営には、ウーバーと同じようにドライバー登録時に市民の名前や住所、運転歴などが必要となるし、走行中の履歴はすべてデータとして収集される。さらに、地域電子通貨での支払いにも登録・個人情報が必要だ。これらデータは複数のアプリやシステム上で走ることになる。

 確かに便利なしくみに見えるが、個人情報の保護という観点からは懸念が生まれてくる。企業の場合は、個人情報保護法によって、「第三者に個人情報を提供する場合には本人同意が必要」となるが、国や自治体の場合はどうか。

 政府は、国や自治体が持つ住民の個人情報について、「本人同意が得られていないなど個人情報関係法令に違反している場合、国や自治体は提供を阻むことができる」と答弁している(北村誠吾規制改革担当相)。

 しかし、実は行政機関個人情報保護法は、公益に資する場合などの「特別の理由があるとき」には、本人同意や通知がなくても、国が事業者へ個人情報提供を行うことを認めている。スーパーシティ構想のもとでの個人情報提供が「特別の理由」にあたるのか、政府は、「個別事例で検討」とする。

 また自治体の場合は、それぞれの個人情報保護条例に沿う形になるが、ここでも本人同意なくデータが提供されるかどうかは「各自治体の判断による」(政府答弁)とされる。国や自治体が本人同意や通知なく個人情報を事業者に渡す可能性もあることが国会審議でも明らかになっている。

 仮に本人同意をとる場合でも、適切で十分な説明があったのか、実際の運用面で疑問が残るのだ。

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