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2020年6月16日 (火)

Clinical ~手術部位感染の予防と歯性感染症の治療~ ⑦

続き:

 

9. 歯性感染症への対応 ~消炎処置と推奨抗菌薬~

 

 歯性感染症に対する抗菌薬療法のポイントは、抗菌薬が感染病巣である顎炎、膿瘍腔などの口腔組織へ移行しにくいため、感染根管治療や膿瘍切開などの局所の消炎処置を併用することである。特に、嫌気性菌が関与する膿瘍に対しては、切開排膿後、生理的食塩水で膿瘍腔を十分に洗浄し、ドレーンを挿入する。これにより、絶対的な菌量を減少し、嫌気性から好気性の環境に変化させる。なお、2005~09年に我が国での口腔閉鎖膿瘍から分離された主要原因菌3,112株の分離頻度は、好気性である Streptococcus 属が73%、嫌気性である Prevotella 属が48%で、多くはこれらの混合感染であった。

 表(後で)では、日本感染症学会と日本化学療法学会が作った『JAID/JSC 感染症治療ガイドライン 2016 —歯性感染症—』から、歯性感染症治療に推奨されている経口抗菌薬とその投与法を A WaRe 分類で Access とされた抗菌薬に限定したものである。1群の歯周組織炎や2群の歯冠周囲炎、および3群の顎炎と4群の蜂巣炎の軽症(3,4群の中等症~重症であれば注射用抗菌薬)に対しては、やはり AMPC 、あるいは CVA/AMPC 、ペニシリンアレルギーであれば CLDM が第一選択される。ただし、SSIの予防とは異なり、歯性感染症の治療が目的となるので、AMPC や CLDM など時間依存性に作用 する抗菌薬は1日3~4回の投与が必要となる。

 なお、抗菌薬の効果判定の目安は3日間で、感染症状が改善しない場合は、外科的消炎処置の追加や他の抗菌薬の変更を検討し、必要に応じて口腔外科などの専門医療機関で精査、加療を求めるべきである。

 

まとめ

 

 我が国の AMR 対策アクションプランや抗菌薬の使用実態をお伝えするとともに、感染の予防と治療という2つのアウトカムを区別して、歯科における抗菌薬の適正使用の考え方を示した。歯科での抗菌薬の使用量は医科に比べるとはるかに低い。しかし、歯科医師も抗菌薬を処方する以上は、AMR に対する危機感を持って、「適切な薬剤」を「必要な場合に限り」、「適切な量と期間」使用するという AMS を遵守していかなければならない。

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