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2020年6月21日 (日)

スーパーシティ構想と国家戦略特区 ③—<2>

続き:

2 住民合意?

 スーパーシティ構想では、計画の承認の際に「住民の合意」が必須であるとされている。自分たちの住む町が、規制緩和の「実証実験」の場になるのだから、住民はもちろん議会でも十分な説明や合意が必要なことは当然だ。では、実際にどのよう住民合意が保証されているのだろうか。

 スーパーシティ実現までには、まず「区域会議」という運営主体が形成される。構成メンバーは「自治体や事業者、内閣府」と政府は説明する。「事業者」とは、例えば自動走行技術を開発する自動車メーカーや、データ管理を行う IT 企業、あるいは企画立案や運営ができるコンサルタント企業などが考えられる。ここで計画案が錬られ、「住民合意」を得た上で案を総理大臣に提出するという流れだ。

 疑問は、ここで合意をする「住民」とはどの範囲を指し、またその合意がどのような手続きでなされるのかという点だ。住民一人ひとりに確認をとることは困難であるとして、「住民代表」という形式で一部の人にだけ意思確認がなされるかもしれない。政府は「決定方法は各区域会議で決めていただく」とし、国として明確な基準や規定を設けようとはしていない。また、自治体が必要と判断すれば区域会議に住民を関与させられると政府は言うが、計画に懐疑的・否定的な住民がここに参加できるだろうか。計画ができあがった後に形式的な住民合意がとられる可能性が極めて高い。議会の関与についても同様の懸念がある。

 さらに、このような実証実験に「参加したくない」人の権利はどこまで保障されるのだろうか。地域全体が「丸ごと未来都市」としてIT化・デジタル化を進める中で、デジタル・デバイド(情報格差)が起こるであろうし、それが行政サービスの格差となれば大問題だ。加えて、スーパーシティ自治体と近隣自治体との格差も生じかねない。

 先端技術を用いた都市開発と住民参画については、海外でいくつかの問題事例も起こっている。

 カナダ・トロント市では、人が居住していないウォーターフロント地区をスーパーシティ化しようと市が計画した。ここにグーグル関連企業であるサイドウォーク・ラボ社が参画し、2017年10月に計画案を発表した。自動走行やキャッシュレスだけでなく、監視カメラで得た住民の行動データを利用するなどのメニューが含まれていた。

 ところが住民は当初から計画について十分知らされておらず、かつサイドウォーク・ラボ社がグーグル関連企業であることからデータ利用やプライバシーなどをめぐり大きな懸念が生まれた。住民は市や企業に説明を強く求め、反対運動も展開された。2019年4月には、カナダ自由人権協会が監視強化や、政府の役割を民間企業に外注することなどの問題点を挙げ、カナダ政府などに計画撤回を求める訴訟を起こした。同協会事務局長で顧問弁護士の M・J・ブライアント氏は、「カナダはグーグルの実験用のマウスではない」と主張。現在、計画は大幅に縮小され再提案される予定だが、行政と企業が民意を蔑ろにしたツケは大きく、結局はうまくいかないことが証明された事例だ。

 米国のカリフォルニア州サンフランシスコ市議会では 2019/05/14 、公共機関による顔認識システムの導入を禁ずる条例案が可決された。巨大 IT 企業を有する米国でこうした決定をした地方自治体は初めてで画期的だ。大企業による顔認証システムの使用は、住民のプライバシー権の侵害をはじめ重大な問題をもたらすとして、弁護士グループや地域の住民たちが提起したのだ。市警察や市営交通機関を含むすべての地方機関は顔認識システムの導入ができなくなり、ナンバープレートリーダー、DNA解析などを含む監視技術を新たに導入する際には市の承認が必要になった。条例案を推進してきた弁護士の一人は、「顔認証技術と健全な民主主義は両立しない」と語っている。

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