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2020年6月18日 (木)

スーパーシティ構想と国家戦略特区 ①

内田聖子<(PARC)共同代表>さんは、自由貿易・投資協定などのウォッチ、政府や国際機関への提言などを行なう。それで「世界 6」から載せる。コピーペー:

■ 問題だらけの国家戦略特区

 スーパーシティ構想とは、国家戦略特区制度のもと新たに設置される仕組みである。国家戦略特区は、加計学園問題で安倍首相の「お友だち優遇特区」として広く知られるようになったが、概要を簡単に振り返っておこう。

 1990年代後半から行政改革・規制改革は加速し、政府の諮問会議等に財界メンバーや有識者と呼ばれる人々が登用され、「規制=悪」という単純な図式に沿ってその撤廃・緩和が進められてきた。こうした流れの中で、第二次安倍内閣が成長戦略の柱の一つとして掲げたのが国家戦略特区だ。地域を限定し、大胆な規制緩和や税制優遇をすることで民間投資を引き寄せ、「世界で一番ビジネスがしやすい環境」をつくると謳われた。その根拠法は2013年12月に成立した「国家戦略特別区域法」である。

 国家戦略特区に指定されているのは現在12の区域で、これまで農家レストランの農地内設置や特区民泊の創設、都市公園内保育所設置の解禁、創業外国人材の入国規制緩和など合計354事業が実施されてきた。

 開始から約6年を経て、国家戦略特区には様々な問題や限界が見えている。354の認定事業のうち、全国展開したのは8事業のみで、日本全体に規制改革が広がってはいない。威勢のよいスローガンを掲げたわりには、その波及効果は極めて小さなものなのだ。開始当初、政府は「2020年までにビジネス環境ランキング(世界銀行)で、OECD諸国内で、3位以内にランクインする」(2014年時点で15位)という目標を掲げた。。しかし日本の順位はむしろ年々低下し、2019年10月の同ランキングでは18位に後退した。経済政策としては明らかな失敗だ。

 何故、規制改革が全国に展開せず、経済成長にも繋がらないのか。それは、国家戦略特区が、自治体の実態やニーズよりも官邸の意向ありきで立案され、各省庁を飛び越えトップダウン型で進められてきた点が関係しているのではないか。決定プロセスも透明性が低く、特定の委員やその関連企業など利害関係者の影響への疑いも強い。

 その象徴的な事例が加計学園の獣医学部新設問題で、首相の圧力(ないしは官僚の忖度)によって公正な判断が歪められたのではないかと追及された。竹中平蔵氏が会長や社外取締役を務める企業が事業を受注しているという指摘もある。

 勿論、すべての事業が利益相反の事例であるわけではないが、いずれにしても開始から3年ほどが経った後は申請事業数も伸び悩み、国家戦略特区は次第に求心力を失っていくのである。

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