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2020年6月24日 (水)

スーパーシティ構想と国家戦略特区 ④

続き:

 断念された「ミニ独立政府」

 これまでスーパーシティ構想の問題点を紹介してきたが、2020年4月法改正審議を見る中で、実は不可解な点があった。この構想が立ち上がった2018年秋時点と現在を比べると、規制改革を目指す”熱量”が、政府与党・有識者懇談会のメンバーから失われたように見えるのだ。

 その理由は、法案作成の過程にある。

 実はスーパーシティ構想を実現するための国家戦略特区法の改正案は、昨年も試みられている。有識者懇談会が「最終報告書」を纏めた2019年2月の直後、内閣府は直ちに法改正案を国会に提出するじゅんびにかかった。当時は片山さつき氏(内閣府特命担当大臣)が前面に出て、華々しく構想の早期実現をアピールしていた。しかし、国会上程前に内閣法制局から「待った」がかかったのだ。

 大きな問題は、複数の規制を一挙に緩和する条例を自治体が設定できるとされていた点だ。これこそが「ミニ独立政府」のこんきょであり、スーパーシティ構想の最重要事項であった。しかし法制局は、これが憲法94条に定める「地方公共団体は、法律の範囲内で条例を制定することができる」との部分に抵触するのではないかと指摘した。

 これまでの特区は、国家戦略特区法に基づき自治体が経済振興策を提案し、国がそれに必要な地域限定の規制緩和を決めていた。一方、スーパーシティ構想では、例えばある自治体が「AIによるまちづくり」という大きなコンセプトを提案し特区の指定を受ける。その後は事業を進める過程で規制の壁が生じれば、条例によって規制の法体系を無効化できるという仕組みだった。

 当然、このようなことが許されてよいわけはなく、無理にやれば国と地方の関係が大きく歪められる。法制局の指摘を受け、内閣府は改正法案の上程を断念し、修正を余儀なくされた。それから約1年後の2020年2月に閣議決定された新法案では、区域会議が総理大臣に複数の規制の特例措置を要望し、総理大臣が担当閣僚に検討を要請、各閣僚が可否を判断するという案になった。

 つまり旧来の国家戦略特区での規制改革プロセスとさほど変わらない形に落ち着いたのである。この時点で、自治体の条例によって強力かつスピーディーに規制改革を実行するという当初の目標は大きく後退したのだ。

 この顛末の前後、規制改革を推進する側からは不満の声が次々と表明された。例えば橋下徹氏は、「安倍政権肝入りのスーパーシティ構想が憲法94条の壁にぶち当たっている。……94条を改正し、自治体に条例による法令内容[上]書き権を一定認めるべきだ。やはり統治機構改革のための憲法改正が必要だ」(2019/04/17、ツイッター)などと述べた。

 自治体条例による法令内容の「上書き権」については、様々な議論がすでにあるが、いずれにしても、この法案修正を機にスーパーシティ構想への各方面からの期待はにわかに萎んだように見える。それでも、これまで指摘してきたような問題がなくなったわけではない。

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