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2020年6月12日 (金)

Clinical ~手術部位感染の予防と歯性感染症の治療~ ③

続き:

 

2. AMR 対策アクションプランとは

 

 薬剤耐性菌が増加している背景の一因には、1980年代以降のヒトに対する抗菌薬の不適正使用が大きく関与している。2015年のG7首脳会議(エルマウ・サミット)のレポートでは、不適正な抗菌薬を含む抗微生物薬の使用に対し、このまま何も策が講じられなければ、2050年には全世界で年間1,000万人(実に3秒に1人)が薬剤耐性菌によって死亡することが推定され、経済的にも100兆ドルの損失があることも試算された。

 このような AMR の発生・伝播を抑制していくために、既に米国疾病管理予防センター(CDC)が1995年から抗菌薬適正使用を訴えるキャンペーンを開始した。欧州でも2008年に欧州疾病予防管理センター(ECDC)が毎年11月8日を欧州抗菌薬啓発デーと定めている。また、2011年のWHO世界保健デーのテーマに「薬剤耐性菌対策」が掲げられ、2015年5月のWHO総会ではAMRに関するグローバルアクションプランが発表され、毎年11月8日を含む1週間が世界抗菌薬啓発週間と定められた。

 そのグローバルアクションプランの最終目標は、「安全で効果的な薬剤により感染症に対する治療や予防手段が確保されている世界」で、加盟各国には2年以内にAMRに関する自国の国家行動計画を策定することが求められた。

 さらに、2015年のエルマウ・サミットではヒト、動物、環境の保健衛生を一体的に推進するワンヘルス・アプローチの強化と新薬の研究開発に取り組むことも確認された。抗微生物薬はヒトへの医療(33%)以外にも、動物の医療(45%)や飼料添加物(13%)、農業(9%)などあらゆる分野で用いられているため、ヒトからヒト、家畜やペットから、あるいは環境汚染から、様々な形式で薬剤耐性菌が伝播する。そのため、それぞれの分野を超え、連携してAMRに取り組むワンヘルス・アプローチが重要になった。

 我が国ではこの2015年の WHO の要請を受け、2016年4月に厚労省が2020年までの5年間に、「適切な薬剤」を「必要な場合に限り」、「適切な量と期間」使用することを徹底するための国民運動を展開することなどを盛り込んだ AMR 対策アクションプランを発表した(表 後で)。

 その概要は、WHO の「薬剤耐性に関する国際行動計画」を踏まえ、関係省庁・関係機関などがワンヘルス・アプローチの視野に立ち、協議して集中的に取り組むべき対策をまとめたものである。このアクションプランは6分野から構成されているが、4番目の抗微生物剤の適正使用は、AMR 対策として日頃の臨床現場で医療従事者および患者を含む医療に係わるすべての者が対応すべき最重要分野の一つとなっている。

 そのため、2020年でのヒトに対する抗菌薬の使用量(人口千人あたりの1日抗菌薬使用量)を全体で 33%減少(対 2013年比)、さらに、経口のセファロスポリン(セフェム)系、フルオロキノロン系、マクロライド系の抗菌薬ではそれぞれ 50 %削減することが設定された(表 後で)。

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