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2020年6月15日 (月)

Clinical ~手術部位感染の予防と歯性感染症の治療~ ⑥

続き:

 

7. 術後感染予防の目的

 

 術後感染予防における抗菌薬の適正使用については、2016年に日本化学療法学会と日本外科感染症学会の consensus statement として『術後感染予防抗菌薬適正使用のための実践ガイドライン』が発表されている。このガイドラインは、臨床医が効率的かつ適切に術後感染予防抗菌薬(以下、予防抗菌薬)を使用することにより、下記の事項を達成し、患者により質の高い医療を提供する目的で作成された。

 

 ①SSIの減少

 ②耐性菌発現の予防

 ③抗菌薬による有害事象の防止

 ④入院期間の短縮化

 ⑤コスト削減

 ⑥医療スタッフへの教育

 

 なお、このガイドラインにおける予防抗菌薬は SSI を減少させることが目的で、原則として遠隔部位感染は対象ではない。また、予防抗菌薬は組織の無菌化を目標にするのではなく、術中汚染による細菌量を宿主防御機構でコントロールできるレベルまで下げるために補助的に使用するとされている。

 

8. 歯科領域における SSI 予防抗菌薬とその投与法

 

 口腔内手術は、感染がなく、清潔操作がほぼ守られている場合は、創クラス分類でクラスⅡの準清潔創 (clean-contaminated wound) とされ、手術操作が及ぶ部位から常在菌以外の細菌が検出されている症例では、その細菌に活性を有する予防抗菌薬を選択するとされている。

 『術後感染予防抗菌薬適正使用のための実践ガイドライン』に記載されている歯科領域における標準術式(歯科用インプラント埋入手術と抜歯)に対する推奨予防抗菌薬、投与量・期間などを示す(表 後で)。

 インプラント埋入、あるいは感染性心内膜炎 (IE) の高リスク(表 後で)や SSI のリスク因子(表 後で)を有する患者への抜歯に推奨されている予防抗菌薬は AMPC であり、ペニシリンアレルギーがある場合は CLDM (副作用として下痢に要注意)である。また、下顎埋伏智歯抜去では CVA/AMPC も推奨されている。一方、IE のリスクや SSI のリスク因子がない場合は予防抗菌薬の使用は推奨されていない。さらに、これらの予防抗菌薬の投与方法は、手術1時間前の経口単回投与 (AMPC は 1回 250mg ~ 1g, CVA/AMPC は1回 375mg~1.5g) が推奨されている。但し、骨削除など侵襲の大きな場合や高度の術中汚染を認めた場合は、予防抗菌薬の術後投与を考慮する。

 IE 高リスク症例(表 後で)で予防抗菌薬投与が強く推奨されている歯科処置を示している。この場合の予防的抗菌薬は、処置1時間前に AMPC 2g(ペニシリンアレルギーがある場合は CLDM 600mg. AZM500mg, CAM 400mg)を経口単回投与する。

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