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2020年6月25日 (木)

スーパーシティ構想と国家戦略特区 ⑤

続き:

■ 誰のための「地方創生」か

 最後に、別の側面からもスーパーシティ構想を考えてみよう。国家戦略特区は「地方創生」の一環としても位置付けられており、特区事業によって地域経済を活性させ、東京一極集中を是正することを政府は目指してきた。

 地方創生は2014年5月、「増田レポート」にて消滅自治体リストが公表されたことに端を発する。同年に統一地方選挙も控えていたこともあり、安倍政権は「ローカルアベノミクス」「地域の経済構造改革」「攻めの農林水産業」など「地域」や「地方」向けの政策に重点を置くようになる。この方針のもとプレミアム商品券や地方創生先行型交付金などの施策が実行。

 しかしこれも国家戦略特区と同様、まず国が「総合戦略」を作り、それに基づいた「地方版総合戦略」が、自治体に事実上強制されるというトップダウンのやり方だ。財政難のもと補助金に頼らざるを得ない自治体は、地域のニーズを汲み取り主体的に計画を立てる余裕もないまま計画づくりに忙殺され、全国で似通った総合戦略が次々策定される結果となったのだ。

 全国市町村の地方版総合戦略担当者へのアンケート調査を実施した坂本誠氏ら研究者によれば、総合戦略策定にあたって実に77.3%の自治体がコンサルタント等への外部委託を行っていた。専門的な知見を得るためコンサルタントに依頼すること自体は否定しないが、注目すべきは委託先の53%が、東京に本社を置くコンサルタント企業なのだ。これらの企業は、一つの自治体につき600~800万円の委託費で受注している。ほとんどの場合、国から自治体への交付金から支払われているが、地方のためであるはずの資金が、東京の企業に還流しているのである。

 また同調査からは、「総合戦略」づくりが自治体にとって相当の負担だったこともうかがわれる。例えば「国主導の強いコントロールの下で進められており、地域の実態に見合った運用になっていない」「計画策定や事業実施に伴う事務負担が大きい」などである。

 結果的に、東京一極集中も是正されるどころかますます悪化しており、企業の本社所在地も、投資先も首都圏(特に東京)に集中したままである。

 経済のグローバル化が進展する中で、地方自治体だけでは解決できない課題は増えている。例えば内田(筆者)が専門とする貿易問題で考えても、2013年以降、政府は TPP11 や日 EU 経済連携協定、日米貿易協定など、地方の農業および地域経済全体に大きな打撃を与える協定を締結してきた。「地方創生」と真っ向から矛盾するこれら政策によって生まれた問題の解決を地方自治体の使命だとするのは、無責任かつ無理があると言わざるを得ない。

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