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2020年7月 4日 (土)

Clinical 「低ホスファターゼ症」という病気とは? ②

続き:

2. HPPの歯科症状

 HPPの歯科症状の「4歳未満の乳歯の早期脱落」について、好発部位は乳前歯部で、特に下顎乳前歯から脱落が開始。

 通常、生後8か月頃から下顎乳中切歯が萌出を開始し、1歳半頃に歯根が完成。その後、4歳頃より下顎乳中切歯は、後継永久歯である下顎中切歯の歯胚形成に伴い、歯根吸収が開始、6歳頃に下顎中切歯の萌出に伴って脱落する。この時の下顎乳中切歯から下顎中切歯への交換はエスカレーター式と呼ばれ、舌側から下顎乳中切歯の歯根が下顎中切歯によって吸収される。

 しかし、HPP症例では下顎乳中切歯の萌出直後の1~4歳にかけて乳歯が早期に脱落する。脱落した乳歯の歯根は吸収されていないのが特徴。脱落が乳前歯部に好発する原因としては、乳臼歯と比較して、短根で、歯根が短い、早期萌出、側方力がかかりやすいこと等が推測される。

 歯は歯根膜を介して、歯根セメント質と歯槽骨が接着している。HPP症例ではセメント質形成不全に起因して、この接着が不十分となる。そして、軽微であっても、外力が加わると、動揺が生じて最終的に脱落に至ると考えられている。永久歯でも同様の状況であり、乳歯と比較して歯根が長いため脱落にまで至らない症例も多いが、実際に脱落した症例も報告がある。

 「4歳未満の乳歯の早期脱落」と前述したが、この表現は医科領域や一般向けに分かりやすく考えられたものであり、実際のところは歯周炎症状というのが正確。つまり、脱落に至る前段として、深い歯周ポケットが存在、動揺を認めることも理解しておく必要がある。通常、乳歯の歯周ポケットは1~2mm程度だが、HPPでは3mm以上の比較的深い歯周ポケットを有することが特徴。特に脱落歯の隣在歯は、歯周状態が悪く動揺を呈していることが多い。一般的には、炎症程度は軽度で、歯肉の発赤や腫脹などは認めない。

 これまでの重症型のHPP症例では、乳歯が萌出開始するまで生存できずに歯科受診することがなかったため、口腔内の状態がよく分かっていなかった。最近になって、酵素補充療法が開始され、重症型の歯科症状が徐々に明らかになってきた。一般的に、小児では3歳を過ぎた頃から詳細な検査ができるようになる。

 日本でも酵素補充療法が開始されて4年目を迎えた最近になって、様々なことが明白になってきている。まだ症例数が少ないため、共通する所見として明確に述べることは困難であるが、重症型の症例は軽症型とは違い、エナメル質と象牙質の石灰化不全を認めたり、開咬、高口蓋などの歯列咬合の異常を伴うことが多い傾向にあると考えられている。

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