アムネスティ通信――対応から取り残される人びと
雑誌「世界 6」より掲載。コピーペー:
国連事務総長が、「世界にとって第二次世界大戦以来の最大の危機」だと呼ぶ新型コロナウィルスの世界的流行。各国が感染拡大防止に懸命に努める中、その対応から取り残された人たちがいる。
例えば、バングラデシュ・コックスバザールのロヒンギャ難民キャンプで暮らす高齢者がそうだ。キャンプにはミャンマー国軍による過酷な民族浄化作戦から逃れたロヒンギャの人たち約86万人が生活している。そのうち60歳以上は、3万1500人を超える。バングラデシュ政府は、国連などの人道支援機関とともに難民キャンプでの感染拡大防止に取り組んできた。しかし、この感染症の知識や蔓延防止の基本情報すら、難民本人、とくに高齢者には行き届いていないのが現状だ。もちろん、当局と支援機関も、伝達方法に工夫を凝らしてはいる。しかし、高齢者特有のニーズが十分に考慮されているとは言い難い。
社会的距離の確保などの感染防止対策が指示される前から、ウィルスについての情報共有する集会も何度か開かれた。しかし、多くの高齢者は開催を知らされておらず、知らされた者も体が不自由なため出席できなかった。アムネスティは難民キャンプの高齢者15人に話を聞いたが、こうした集まりに出たのは、1人だけだった。家族や隣人から聞いたという者もいたが、その中身は危険なウィルスで清潔が大事だという程度の情報で、具体的な対策や注意点はほとんど知らされなかった。
新型コロナウィルス感染では高齢者が重症化するリスクが高いことは、周知のとおりである。難民キャンプの衛生環境も物資も十分とは言えない。その中で、高齢者がコロナ対策から取り残されることは、悲惨な結末しか生まない。
他の難民キャンプの多くも、同様の状況にある。ギリシャの島々にある難民キャンプでは、今にも崩れ落ちそうなテントや暖房もないコンテナで、定員の6倍もの人が暮らす。過密状態の中、水やトイレ、シャワーといった衛生設備は極端に不足している、「手すら洗えない」状況にあるという。病気になっても満足に治療も受けられない。ギリシャ政府が移動制限しているため、キャンプから出ることもままならない。
難民の中には高齢者や持病のある人など重症化リスクの高い人たち、子どもたち、妊婦、小さい子どものいる母親、障がいを持つ人も大勢いる。このような中、感染者が出たらどうなるか。
誰もが命の危機とは無縁ではいられないこの危機において、対策が届かないということがあってはならない。各国は、社会から追いやられがちな人びとの状況とニーズも、十二分に考慮すべきである。
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