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2020年7月22日 (水)

人間と科学 第314回 体と心の5億年(4)―レオナルド・ダ・ヴィンチの「絵画の科学」 ①

布施英利(解剖学者・美術評論家)さんの小論文を掲載。 コピーペー:

 前回は進化論のチャールス・ダーウィンを取り上げて、彼の著書『ビーグル号航海記』の旅をめぐる話について書いた。今回は一度脱線して、ダーウィンの続きは次回に。こういう「息抜き」で自分(布施)が書きたいこと・伝えたいことの奥行きがでるとも思えるからだ。

 さて今回は、レオナルド・ダ・ヴィンチの「絵画の科学」について書きたい。現代の学問や、大学をはじめとする制度は理系・文系の分離など、専門分化が顕著だ。しかしそういう分断を繋ぐスタンスも必要で、これまで取り上げたチャールス・ダーウィンや三木成夫もそうだったが、その話の流れでレオナルド・ダ・ヴィンチは外せない。

 レオナルド・ダ・ヴィンチは、1452年にイタリアのフィレンツェ郊外のヴィンチ村で生まれた。そして1519年にフランスで没した。昨年(2019)は、ダヴィンチ没後500年ということで世界の美術館で様々な企画展が開かれた。私(布施)も夏にロンドンへ、そして冬には再びロンドンとパリへ行き、没後500年展として重要な展覧会を見てきた。

 夏のロンドンの展示は、大英図書館とイギリス王室のクイーンズ・ギャラリーで開催されたが、どちらもレオナルド・ダ・ヴィンチの手稿が展示された。ダ・ヴィンチというと、何より<<最後の晩餐>>や<<モナリザ>>の画家として有名だが、67年の生涯で残した絵画は十数点と少ない。それに対して、手稿は量は膨大で、1万数千紙葉を書いた。単純にして生涯の平均で1ページ/1日になる。我々が日記をつけるとしても、はたして平均して1ページも書けるか。しかもダ・ヴィンチの手稿は密度が高く、絵画や工学や解剖学や多岐の分野にわたってビッシリと書かれている。その手稿から、ダ・ヴィンチの画家以外の側面が読み取れるのだが、それを展示したのが2019年夏の二つの展覧会だった。

 大英図書館の「LEONARDO DA VINTI A Mind in Motion」という展覧会には、レスター手稿とアランデル手稿の二つを中心に、大地を流れる川、宇宙の天体の動き、人体の動きなどに関するものが展示されていた。科学者としてのダ・ヴィンチの横顔である。因みに、このレスター手稿の所有者は、あのビル・ゲイツだ。ずっと「レスター手稿」と呼ばれていたものを、アーマンド・ハマーという実業家が1980年にオークションで落札し「ハマー手稿」と改名したが、1994年、今度は、ビル・ゲイツが所有者となり、元のレスター手稿に名前を戻した。

 「ビル・ゲイツ手稿」などとしなかったところが、彼の立派なところだ。

 

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