デジタル・メディアとアナログ・ジャーナリズム ①
河原仁志(ジャーナリスト)さんは「世界 7」に載せている。 コピーペー:
現代社会の実相を浮き彫りにしたコロナ禍は、ジャーナリズムの世界でも今日的な課題と死角を映し出した。命の安全と経済をめぐって割れる世論。ネットに飛び交う真偽不明の情報。そして対面取材がかなわない記者たち。それはデジタルの時代にメディアがどう生き残るのかという命題とも通底しているように見える。ジャーナリズムにいま求められるものは何か。もう一度踏み固めておくべきこととは何なのか。
◉ それでも現場へ<1>
2011年の東日本大震災は、私(河原)の30余年の編集・記者生活の中での超弩級の出来事だった。こんな大ニュースは再びはないだろうと思ったが、今回のコロナ禍はその無差別性と影響の大きさにおいて上回るだろう。
この二つの災厄には取材・編集上の共通課題が多い。放射性物質やウィルスという目に見えない危険と向き合う取材の難しさはその1つだ。
大震災では福島第一原発で起きた事故の実態や放射性物質で汚染された原発周辺の取材が焦点だった。河原が在職した共同通信では、震災発生から約1ヵ月後の4月14日に私(河原)を含めた管理職の記者4人でチームを編成し、車で原発周辺への接近取材を試みた。当局の規制がかかる前のことだ。事前に現地の放射線量を調べると、風向き次第では原発から3km近辺までは行けそうなことが分かった。社内で慎重意見もが、「安全管理を徹底した上で『現場』を伝えるぎりぎりの努力をする」として上層部の了承を得た。防護服、線量計はもちろん、ヨウ素剤の服用、帰路での除染など準備には万全を期した。実際の取材では、ある地点を超えると急速に高まる放射線量の怖さや、野生動物が跋扈する無人の街の様子など、実情がわからなかった原発被害の一部を動画と活字で伝えることができた。
実は当初、私(河原)は原発周辺の取材など思いも及ばなかった。だが同期の編集委員から「現場を伝えるべきじゃないか」と言われてはっとした。咄嗟に「二次災害に遭ったら俺たちがニュースになるぞ」と言い返したが、彼は「そんなに危険かどうか調べればいい」と諭した。周辺の線量や風向きなどを詳しく調べ始めたのはそこからだ。私(河原)はできるかどうかも検討せず無理だと決め込んでいた自分を恥じた。
« Report 2020 テレワーク ③ | トップページ | デジタル・メディアとアナログ・ジャーナリズム ② »
「日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事
- Report 2023 感染症根絶 ④(2023.11.30)
- Report 2023 感染症根絶 ③(2023.11.28)
- Report 2023 感染症根絶 ②(2023.11.24)
- Report 2023 感染症根絶 ①(2023.11.15)
- Science 糖尿病における歯周病 ~基礎研究からその問題点を考える~ ⑦(2023.11.11)