« Science 身体機能のすすめ ① | トップページ | Science 身体活動のすすめ ③ »

2020年8月12日 (水)

Science 身体活動のすすめ ②

続き:

2. 身体活動に関する世界行動計画 2018-2030 (GAPPA)

 世界でも広く身体活動状態は問題視され、優先度の高い公衆衛生課題と認識されているが、一向に不活動率は改善していない。

 (世界の身体不活動者の年次推移 身体不活動者:中強度以上の身体活動が週 150分未満かつ/または高強度の身体活動が75分未満の者。2000~2015年 男子25%と変化なし、同じく 女子もこの15年間 35%と変わっていない。)

 世界的な現状を受け、2018年5月の第71回世界保健総会で決議され、6月にWHOが、Global Action Plan on Physical Activity 2018-2030 (GAPPA:身体活動に関する世界行動計画 2018-2030) を発表した。

 GAPPAでは、身体不活動者を減らし、健康的で持続可能な世界をつくるため、『アクティブな社会を創造』、『アクティブな環境を創造』、『アクティブな人々を育む』、『アクティブなシステムを創造』という4つの戦略目標とそれぞれの目標に4~6項目、計20の政策措置を設定。具体的な目的として、身体不活動者を2025年までに相対的に10%、2030年までに15%減らすことを掲げている。これらの戦略目標および政策措置はそれぞれ独立したものではなく、相互に関わり合っている点がポイント、部分だけでなくそのつながりや関係性を重視する考え方、すなわち、システムベースのアプローチ、システムズアプローチにより、全体をとらえて考えていく必要があることを強調している。

 これらの戦略目標や政策措置は、いわゆる健康分野や運動・スポーツといった分野だけで達し得るものではなく、例として都市計画・交通・教育・人材育成といった多様な分野が協力して初めて成し得るもの。かつ、その効果は、身体活動増加→健康増進という流れだけでなく、(例)徒歩や自転車での移動励行による、自家用車利用の低減→二酸化炭素排出低減、など多様な分野にもベネフィットを生み出しうる(コベネフィットや、共益という)ものである。これらコベネフィットを考え合わせると、2030年までの持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals:SDGs )のうち少なくとも 13 の領域と相互連携しており、その達成に貢献し得ることが示されている。

 GAPPAで示したシステムズアプローチは、入口も多様、出口も多様で、相互に関連して、多くの分野で応用でき、かつ、それぞれの利益や、さらに高次の利益につながるということを社会全体で理解し取り組んでいく必要がある。

 これは、マルチレベルでの取り組みを示したエコロジカルモデルを基盤とした健康日本21(第二次)のコンセプトを包含しているところがあるが、さらに進んだ考え方といえよう。

 GAPPAの行動計画は100ページに及ぶものであり、特にWHO、各国、さらにそれぞれのステークホルダーが何をすべきか、20の政策措置ごとに記載されている。我々は日本運動疫学会と協力し、日本語訳を作成した。詳細は、慶応義塾大学スポーツ医学研究センターホームページ(http://sports.hc.keio.ac.jp/ja/news/2020/02/who2018-2030.html)を参照。

 今後、日本の国レベル、地域レベル、何らかの集団レベル(職域・学校他)においてステークホルダーが集まりGAPPAを咀嚼し、それぞれに合った行動計画を立て、実行・再評価・共有し、スケールアップしていく必要がある。

« Science 身体機能のすすめ ① | トップページ | Science 身体活動のすすめ ③ »

日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事