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2020年8月26日 (水)

パンデミックが示した課題 ①

井田徹治(共同通信編集委員・本社科学部記者)さんは「中国の一都市に端を発した新型コロナウィルスは数か月のうちに世界規模でのパンデミックを引き起こし人間社会と世界経済の姿を一変させた。…」小論を述べている。コピーペー:

■ 気候危機が招くまん延

 人間が引き起こした地球温暖化が招く「気候危機」も感染症拡大の危機と深く関連しいる。

 「地球温暖化の進行は動物の分布を変え、ウィルスが野生動物から人間に移行する機会を大幅に増やす」――。今年1月、米ジョージタウン大学などの研究グループは、こんな分析結果を発表し、新たな動物由来感染症発生の危険性を警告した。研究グループによると人間に感染する可能性があるウィルスは最大60万種ともいわれ、その多くが野生動物を宿主としている。今後の温暖化の進行によって、3870種の哺乳類の分布がどう変化し、人間が暮らす場所とどう重なるかなどを、コンピュータを使って予測したところ、温暖化が進むと、標高の高い地域や高緯度地域に多くの哺乳類の分布が広がり、接触の機会も増えてウィルスが人間を含めた他の動物種にも感染する可能性が大幅に増えるとの結果が出た。

 新たな動物由来感染症の原因となりやすいのは、ネズミなどの齧歯類、コウモリ、人間を捕食することがある大型哺乳類だったが、中でも移動能力が高いコウモリのリスクが大きいことも分かった。ウィルス感染の可能性が高まるのは、アフリカ東部、インド、中国東部、フィリピンなどの人口が多い国々で、研究グループは、これらの地域で監視態勢を強めることが重要だとした。

 これまでも温暖化の進行が熱帯感染症拡大につながることは指摘されてきた。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、温暖化が進むと、デング熱やマラリアなどを媒介する蚊の分布域が拡大、これらの感染症にかかる人の数が増えると予測。

 蚊が媒介するアフリカのリフトバレー熱、北米や中南米で確認され、齧歯類が広げるハンタウィルス肺症候群などが、特に温暖化との関連が高いとされる。

 毎年、多くの人命を奪っている熱帯感染症の一つ、デング熱が日本に侵入し、大きな注目を集めたことは記憶に新しい。デング熱は蚊が媒介する。年間40万人以上の命を奪うマラリアを媒介するのもハマダラカだ。

 蚊が媒介する感染症は他に日本脳炎、西ナイル熱など多く、合計で年間83万人が命を落としているという。その数は二位の人間による58万人の殺人を大きく引き離しており「地球上で最も危険な動物」だとも言われる。温暖化に加え、都市の人口密集やヒートアイランド現象が蚊の生息域拡大に拍車をかける。

 米国のジョージタウン大学の別の研究グループは、温暖化が進むとヒトスジシマカなどが媒介するデング熱やチクングニヤ熱の感染者が今世紀末には10億人も増える可能性があることを指摘。中国の研究グループは、温暖化が進むと寄生虫の宿主である巻き貝の数が増え、住血吸虫症が増えると警告しているし、日本の環境省も、今後、デング熱の感染拡大、日本脳炎やマラリアの発生が懸念されるとしている。

 都市のロックダウンなどの結果、中国やインドなど大気汚染が深刻な都市で、大気の状況が大幅に好転したことが報じられた。米イェール大学などの研究グループは、中国の360を越える都市の大気汚染のデータから、この間の大気汚染の軽減によって汚染が原因の死者1200人以上減ったとの試算結果を医学誌「ランセット」に発表。逆に米国の研究では、大気汚染が激しい都市ほど、新型コロナウィルスが原因の死者が多いとのデータが示されている。気候危機の原因となる化石燃料の使用削減は、さまざまな形でリスクの低減に貢献するだろう。

 

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