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2020年8月31日 (月)

コロナ危機は生態系からの警告である ③

続き:

<死に至る病・エボラ出血熱>

 アフリカ熱帯雨林を起源とする新興感染症の例として、エボラ出血熱を取り上げる。エボラ出血熱は、エボラウィルスによって発症、主として感染者の血液や排せつ物に触れることによって感染。最初は1976年にスーダンとザイールで大流行、約600例の患者を数え、致死率はスーダンで53%、ザイールで88%と、きわめて危険な伝染病としてアフリカ諸国の脅威となった。いずれの場合も、二次感染の拡大はおもに感染者の収容された病院を中心に起きた。――院内感染。原因となるウィルスが発見され、ザイールでの流行地の川の名をとってエボラウイルスと命名した。スーダンとザイールでウィルスが分離されて、それぞれスーダン型、ザイール型と名付けられた。1979年にはスーダンで34人の患者発生(致死率65%)がみられた。1994年には象牙海岸(アイボリーコースト)のチンパンジーの解剖に携わったスイス人女性研究者が発症。ここでもウィルスが分離されて、これまでとは別の型であることが分かり、アイボリーコースト型とされた。1995年にはザイールで再び大流行し、296人が発症、うち79%が死亡した。1994~96年にはガボンで3回の流行があって、総計241人が発症、うち66%が死亡。

 2000年代になっても、さらに流行が続く。2000年にウガンダでスーダン型のウィルスによるエボラ出血熱の大流行が起き、患者425人、そのうち53%が死亡した。2001~2002年にガボンとコンゴ民主共和国の国境付近で流行し、ガボンで患者65人、うち死亡53人、コンゴ民主共和国で患者32人、うち死亡20人を数えた。2003~2008年にコンゴ民主共和国(1997年にザイールから改名)とウガンダ、2008年にコンゴ民主共和国、2011~2012年にウガンダで流行を繰り返した。2014年に西アフリカ諸国でパンデミックが発生、2万8512人が感染および感染の疑い、うち1万1313人が死亡した。この地域特有の死者を清拭する葬儀で、参列者が血液や体液に触れることで感染が広がったと分析されている。2018~2019年にはコンゴ民主共和国でパンデミックが発生、とくに紛争地帯である北キブ州やその周辺で、2020年4月14日までに3458人の感染および感染の疑い、うち2277人が死亡したとされる。

 このエボラウイルスの自然宿主はオオコウモリの仲間、ウマヅラオオコウモリ、フランケオナシケンショウコウモリ、コクビワフルーツオオコウモリであると考えられている。一方で、2002年に WHO は、ガボン北部でゴリラ(ニシゴリラ)からエボラウイルスを検出したと報告した。ガボンでは、2002~2005年に5500頭に及ぶゴリラがエボラ出血熱で死亡したとされる。またチンパンジーも数万頭の規模でエボラ出血熱の犠牲になり、密猟や生息域の破壊とともに個体数減少の大きな要因の一つと言われている。これらゴリラやチンパンジーは自然宿主ではなく、感染すると高い確率で死に至るため、ヒトと同様に終末宿主である。

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