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2020年8月19日 (水)

Clinical 行動科学に基づいたブラッシング用具の選択と使い方 ③

続き:

4. フッ化物配合歯磨剤の使い方

 FDI(世界歯科連盟)とIADR(国際歯科学会)、およびWHOによって、日本を含むアジア諸国におけるフッ化物配合歯磨剤の推奨使用法が提言されている。主な内容については、

      フッ化物配合歯磨剤の推奨使用法

     フッ化物濃度   1000~1500ppm(有効フッ化物800ppm以上)高齢者では1500ppmを超えるもの
      回 数   1日2回以上
      使用量は

  6か月~2歳:極少量、エンドウ豆の半分(0.05~0.1g) 2~6歳:エンドウ豆大、歯ブラシの幅(0.25g) 6歳以上:歯ブラシのヘッドの長さ(1~1.5g)

 

     歯磨き時間   吐き出さずに2分間以上
    歯磨き後の洗口   最小限にとどめる

1) フッ化物濃度

 フッ化物配合歯磨剤は濃度依存的にう蝕予防効果が高まることが明らかになっている。WHOのテクニカルレポートではフッ化物が500ppm未満では、う蝕予防効果の科学的根拠が乏しく、逆に1000ppmを超えるとフッ化物濃度が500ppmの上昇ごとに6%のう蝕予防効果が得られることが報告されている。

 我が国では平成20年にフッ化物濃度が1500ppmを上限とした歯磨剤が承認、海外と同程度の濃度でフッ化物を配合することが認められるようになった。

 ただし6歳未満の子どもの場合は、フッ化物の配合量が1000ppmを超える歯磨剤については「6歳未満の子どもへの使用を控える」、「6歳未満の子ども手の届かないところに保管する」といった表示をして、前歯の歯冠が完成していない小児への注意喚起がされている。

2) 使用量とブラッシング時間

 フッ化物配合歯磨剤のう蝕予防効果には、フッ化物濃度と同様に歯磨剤の使用量が重要。歯磨剤中のフッ化物は口腔内のカルシウムと反応して唾液に溶けにくい性質のフッ化カルシウムを形成、歯面に残り、その後、徐々に溶け出し、フッ化物イオンを徐放することによりう蝕予防効果を発揮する。

 歯ブラシに歯磨剤を付けてブラッシングを開始すると、フッ化物は口腔内の唾液によって希釈され、徐々にその濃度が低下する。フッ化物が歯や唾液のカルシウムと反応し、歯に取り込まれるかどうかは濃度が重要、中性領域では300ppm以上ないとフッ化カルシウムが形成されにくい。

 ブラッシング中に口腔内でのフッ化物濃度が300ppm以上に保たれる時間は使用量に強く影響を受ける。歯磨剤の使用量が少なければそれだけ早く唾液によって希釈され、ブラッシング中にフッ化物濃度が急速に下がる。1000ppmのフッ化物配合歯磨剤の使用量とブラッシング中の口腔内フッ化物濃度との関係結果によると、1~2分間の減少が大きく2分からさきは、徐々に低下する。

 歯の表面にフッ化カルシウムを形成するのに必要な時間は2分程度であり、フッ化物配合歯磨剤を効果的に働かせるには300ppm以上の濃度を2分間保つことがポイントになる。そのためには、1000ppmの歯磨剤では1g(2cmの歯ブラシのヘッドに2/3程度)以上使用する必要がある。

 上の表のアジアへの提言では6歳以上では歯ブラシのヘッドの長さ(1~1.5g)を推奨使用量としている。

 また、歯周疾患などによって、じっくりと長い時間をかけてブラッシングを行う必要がある場合では、最初から1g以上の歯磨剤を使用すると磨きづらいので、最初は少量の歯磨剤をつけて十分な時間をかけてブラッシングを行い、最後の2分間に十分な量の歯磨剤を用いて口腔内にフッ化物が行き渡るように使用することで、それぞれの役割を有効に両立させることができ、歯周疾患によりリスクが高まる根面う蝕の予防が期待できる。

 

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