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2020年8月13日 (木)

Science 身体活動のすすめ ③

続き:

3. 身体活動促進の取り組み ~藤沢市の例~

 我々慶応義塾大学大学院健康マネジメント研究科・スポーツ医学研究センターでは、藤沢市と慶応義塾大学湘南藤沢キャンパスの協力協定(2009年10月)を基盤に、市民の身体活動を図るべく、市の健康増進課、藤沢市保健医療財団と連携して、調査・介入を行ってきた。この取り組みにもGAPPAに通じるところが数多く認められる。――今までの経過・成果を紹介する。

1)ふじさわプラス・テンプロジェクト:身体活動の普及・介入開始

 2013年度から、健康上の課題が多いと考えられた13行政地区のうち4地区を対象に、特に60歳以上をターゲットとした身体活動増加のための介入開始した。アクティブガイドを活用して、”プラス・テン”をキーメッセージとして、地域全体(ポピュレーション)への多面的介入(コニュニティーワイドキャンペーン)を2年間実施。これは「ふじさわプラス・テンプロジェクトにおけるロジックモデル」に基づき、情報提供・教育機会提供・環境整備といった多面的・多レベルの介入を行政組織、住民組織、医療関連組織など地域の各部門と協働して行うものである。情報提供には、チラシ・ポスター、リーフレットなどを用いて行ってきた。単に全戸配布するよりも回覧板による案内や、意識の高い市民から他の市民への伝達のほうが到達度が高い。

 教育機会の提供では、地域の自治会や、サークル活動の際に出向き、簡単な健康・身体活動講話と10分ほどの運動を実践するワンポイント講座を実施。自主参加型の運動教室では到達できない層へのアプローチ方法として有効。また、地域には仕組みやツールができれば、身体活動の継続実施を行える潜在的なコミュニティがあることが分かってきた。生活圏での継続的な身体活動実施グループの醸成といった環境整備が、地域のソーシャル・キャピタルの強化、生活の質の改善、健康寿命の延伸につながると考えられた。

2)ふじさわプラス・テンプロジェクト:多面的介入と活動の継続

 2015年度からは、全地区に拡大、コミュニティ形成促進の介入を発展させ、地域コミュニティへのグループ運動介入・評価と支援、フォローアップに注力した。イノベーション普及理論やコミュニティづくりに関する理論を応用し、地域とのつながりを介して、身体活動の普及・継続が促進されるような戦略を強化。グループ運動の対象は身近な地域で週1回以上集まって運動実施するグループ(自治会、老人クラブ、サークル活動等)とした。グループ運動研究には、10グループ・計192名(平均年齢75.2歳)が参加。

 身体活動の目標量は、グループ運動を週1回以上、個人では毎日プラス・テンを行うこととした。研究班では、参加時・6か月後・1年後・その後年1回の調査(体力、身体活動量、認知機能、アンケート)、その後の結果説明を含めたフォローアップ、ツールの提供(ふじさわプラス・テン体操、セルフモニタリングなど)、定期的な交流会の開催、ニュースレターや研究班のウェブサイトによる情報提供などのサポートを継続的に行っている。周囲へのプラス・テンの普及も推奨した。

 最初の1年間では、グループ運動継続実施者(8グループ・計148名、平均年齢75.7歳)は1年後の体力(30秒イス立ち上がりテスト、2ステップテスト)の増加が認められた。身体活動および認知機能は維持。また、グループ運動を継続している2グループ・計26名(男性11名、女性15名、平均年齢74.7歳)にフォーカス・グループ・インタビューを行った。定期的なグループ運動を通して生じた変化(心、身体、対人関係)やコミュニティの変化をインタービューした結果、定期的なグループ運動が身体的・精神的・社会的にバランスのとれた健康につながっていることが抽出された。さらに身近な地域の運動グループは、排他的ではなく地域にオープンなコミュニティの形成(inclusive community)につながっていた。

 交流会におけるグループワークやアンケートの結果から、グループ活動を円滑に進めるための特徴をルール(自生した規則や制度・決め事)、ロール(ルールに基づき自発的に担う役割)、ツール(活動に役立つ道具や資源)の観点より抽出・整理した。その結果、グループ運動の開始・継続・普及に関連するルール・ロール・ツールに整理することができた。さらにこれらの結果を、具体的な実践例として「グループで行う運動のすすめ方ガイド(グループ運動ガイド)」にまとめた。そして、このガイドを活用したグループ運動のワークショップを藤沢市が行うなど、活動の普及・継続につながっている。

 ふじさわプラス・テンプロジェクトは、市長が先導するリーディングプロジェクトの5つの柱の一つとして市の施策に取り上げられスケールアップし継続中である。また、行政だけでなく、例えば藤沢市老人クラブ(124クラブ、約6300名)も賛同し、クラブ会員全体への質問紙調査の共同実施など、今後の取り組みに拡大している。

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