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2020年9月22日 (火)

いまこそ <健全な社会> へ ⑥

続き:

□ 危機は何を開示したか?――格差社会と環境破壊の代償

 パンデミックは、グローバルな複雑性に内在する多次元的なフィードバック・ループを通じて、感染流行国において多大な疫学的・社会的・経済的被害を引き起こした。

● 感染症の重症化する地域と社会集団の偏り

 その第一の側面は、感染の重症化する地域と社会集団に大きな偏りがあった点だ。既に2020/03/16、の時点で、ブリュッセルの非営利団体・欧州公衆衛生連合(European Public Health Alliance)は、大気汚染の深刻な地域において症状が重症化する可能性が高くなる恐れがあると発表した。

 以後、大気汚染との関連性は欧州の各メディアが注目するところとなった。3月後半以降最大の感染流行国となった米国においても、デトロイト、ヒューストン、ロサンゼルス、ナバホ・ネイションなど、大気汚染の深刻な地域において重症患者が多発していることが確認された。

 これらの汚染地域の中でも、重症患者は特定の社会集団に集中している。欧州最大の高齢化社会であるイタリアの場合、その多くは基礎疾患を抱えた高齢者だった。米国と英国では、非白人系住民の死亡率は白人系住民よりも数倍高い傾向を示している。フランスにおいても同様で、首都パリを擁するイル=ド=フランス地域圏全体の感染者の平均死亡率が、3月14日~20日の1週間に34%増加したのに対して、域内の貧困地区であるセーヌ=サン=ドニ(住民の多くは、旧植民地からの移民とその二世・三世)では63%増加した。これらの貧困地区の非白人系住民は、栄養バランスの悪い食生活に由来する肥満や高血圧などの基礎疾患を抱えており、住宅の衛生状態や医療へのアクセスが悪い環境に暮らし、清掃・介護・空港の作業など、感染リスクの高い低賃金労働に従事していた。

 パンデミックは、グローバル化の過程で深刻化した大気汚染と貧困の二重の負荷によって既に様々な健康問題を抱えていた社会集団に、より大きな被害を与えた。そこには人種をベースとした格差の問題も絡んでおり、植民地主義以降の世界システムの歴史が絡む差別と貧困の構造に、地球環境破壊の影響が重なり、そこに感染症が作用するという複雑なフィードバック効果を生み出した。

 

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