« コロナ危機は生態系からの警告である ⑥ | トップページ | Report 2020 COVID-19 と熱中症対策 ① »

2020年9月 5日 (土)

コロナ危機は生態系からの警告である ⑦

続き:

<野生動物との共生――どのような世界を望むのか ②>

 また2016年末からブラジルで14年ぶりといわれる黄熱の流行が見られ、都市部での感染拡大が懸念される事態となった。黄熱は蚊が黄熱ウィルスを媒介することで感染が拡がる。サル類もヒトと同様に黄熱に弱く、このブラジルの流行ではホエザルを含めて数千頭のサルが黄熱で死亡したとされる。ブラジル東南部では、サルが黄熱の感染源であると考えた住民がホエザルを銃で撃ったり、撲殺したりする事件が相次いだ。

 しかしながら、研究者たちはサルが黄熱ウィルスの自然宿主であると断定できず、むしろ森にサルたちがいなければ、ヒトが発症するまで黄熱ウィグルの感染拡大を検知できないため、都市に感染が広がる危険が増すとしている。「炭鉱のカナリア」論だ。その昔、炭鉱労働者がカナリアを籠にいれて坑道に入り、有毒ガスが発生した場合、人間よりも先にカナリアが察知して鳴き声が止むことから危険を回避したという逸話である。

 SDGs(持続可能な開発目標)の17個の目標のなかで、15番目の「陸の豊かさも守ろう」は他の目標を達成する方向と逆行するすることが多い。1番目の「貧困をなくそう」や2番目の「飢餓をゼロに」では、素直に考えれば生物多様性の高い自然林でも食料生産のために農地・牧地開発に転換する方策となる。また7番目の「エネルギーをみんなに、そしてクリーンに」では、大規模な再生可能エネルギー施設やバイオ燃料作物のプランテーション開発がしばしば生物多様性の高い自然を破壊することになる。

 生物多様性の機能的価値や遺産的価値は、これまでも様々に論じられてきた。それに加えて、「炭鉱のカナリア」の逸話のような生物多様性の指標的価値は、もっと注目されてよい。丁度、国籍や性自認と性的指向、心身障がいなどのダイバーシティを尊重することがすべての人々が安心して暮らせる包摂的で強靭な社会の指標となるように、生物多様性が保持されている生態系が人類の生存にとっても良好な環境が維持されていることの大きな指標となる。

 今回のコロナ危機を含む新興感染症の波状攻撃は、地球規模の大きな環境変化によるものであり、生態系からの警告であるいえる。いま地球上に存在する生物多様性を保持することは、今後起こりうる様々な大変化に対してレジリエンスが高く、将来世代に様々なオプションを残すことにつながる。SDGsの本質は、ひとつひとつの目標達成するだけでなく、相矛盾する目標を同時達成することで、その矛盾の克服によってこそ、SDGsの究極的な目的である「誰ひとり取り残さない」世界が実現されるのだ。

« コロナ危機は生態系からの警告である ⑥ | トップページ | Report 2020 COVID-19 と熱中症対策 ① »

日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事