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2020年9月16日 (水)

Clinical ~発達不全と低下~ ⑤

続き:

おわりに

 筆者(弘中)は長年にわたり、食べる機能に障害を持つ障害児者の摂食嚥下障害の診断・評価・治療に携わってきた。障害児者の摂食嚥下障害への考え方の基本は、正常な発達にどれだけ近づけるかが重要である。ところが、近年、正常な発達自体がぶれ始めていることに気付く。正常な発達とは?まだまだ研究途上だ。

 定型発達児の機能の乱れは、その後の医療費の無駄な増加にもつながる。そして、家庭への負担を助長しかねない。重症心身障害児者の摂食嚥下障害と大きく異なるのは、定型発達児には子ども自体に延びる力が十分にあり、少しの環境変化(指導・管理)で健常な発育に戻せる点である。

 診療報酬の改定その他により、これからの歯科医師のスキルに口腔機能評価がますます重要になってくることは間違いないと思われる。

 また、同様に要介護高齢者を診察して、どうしてここまで放っておいたのだろう? と疑問に思う時がしばしばある。ただ、介助者や家族も、口のことばかり構ってはいられないのが現状である。やはり、我々歯科の口腔機能に対するアプローチがもう少し国民の心に響かなければ、気軽に呼んでもらえないのかもしれない。

 口腔機能の話をすると、「自分が学生の時にはそんな授業はなかった」と答えられる諸兄も多い。ただ、難しく考えるのではなく、診療の合間の何気ない子どもや高齢者との会話や、ブラッシング指導時のうがい等、子どもや高齢者の口腔機能を評価する時間は診療室でも意外に多くある。また、栄養や体格は保護者・介護者との会話(医療面接)に必須の内容だ。

 子どもや高齢者の全身状態の評価の鍵が、歯や口腔に多くちりばめられていることを今一度深く思い返していただきたい。そして、可及的に早めに気付くことが肝要であると思っている。一人でも多くの子どもや高齢者が安全に、楽しく、美味しく食事ができることを願って、そしてそのことが機能だけでなく、豊かな人生にまでつながる未来を夢見ている。

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