« 可視化されたベーシックインカムの可能性 ⑦ | トップページ | 可視化されたベーシックインカムの可能性 ⑨ »

2020年10月18日 (日)

可視化されたベーシックインカムの可能性 ⑧

続き:

ベーシックインカムの役割

 ベーシックインカムは、こうした 20c. 型の雇用と社会保障制度にどのように関わるであろうか。

 第1 に、戦後の資本主義は完全雇用と社会保障を両輪として成長を遂げてきたが、1970年時代初頭に長期停滞へ移行したことに伴って、従来の高い経済成長率を維持することは困難となった。従来の雇用が戦後経済成長の波に煽られた、つねに必要以上の肥大化傾向をもつ不合理なものであったのに対し、ベーシックインカムは過度に肥大化した生産と消費から就労促進圧力を下げ、労働時間を短縮しつつ人々の生存権を保障する。

 第2 に、第二次世界大戦後の経済成長を支えた巨大な資本蓄積と社会保障の巨大な船は、エンジンも船体も老朽化し、いまや大きな軋み音をたてている。従来の社会保障が男性正社員中心の完全雇用を典型モデルとし、それから逸脱し溺れた場合の選別的な救命ボートであったのに対し、ベーシックインカムはいわば各自がつねにライフジャケットを身につけた状態にする。

 ベーシックインカムが他の社会保障制度を廃止するという批判がある。たしかにリバタリアン(自由至上主義者)の主張がないわけではないが、多くの論者はベーシックインカムが既存の制度と共存し、それらを補完するものと考えている。ただし既存の制度のあり方をすべて肯定しているわけではなく、その包摂力の限界を意識したものといえる。

« 可視化されたベーシックインカムの可能性 ⑦ | トップページ | 可視化されたベーシックインカムの可能性 ⑨ »

日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事