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2020年10月 5日 (月)

Clinical 抗血栓薬多用時代に歯科医師が知っておくべきこと ③

続き:

1) 冠動脈疾患

 冠動脈疾患には、急性冠症候群と慢性冠疾患がある。動脈硬化により冠動脈の狭窄をきたし、狭窄度が75%を超えると労作時の狭心症が生じる。この段階では安定型狭心症であり、生命の危険はほとんどない。この状態のまま安定しているのが、慢性冠疾患である。しかし、血管壁内のプラークと呼ばれる脂質集積が増大し、血管内腔に破れると事態は急変する。急速に血栓が形成、そして冠動脈を閉塞に至らしめる。このことを急性冠症候群と呼び、ほぼ急性心筋梗塞と同義語である。

 以前は、急性心筋梗塞は血管が下水道のパイプが詰まるように徐々に狭くなるとされていたが、上記のような急速の血栓形成が原因であることが1995年以降証明された。急性心筋梗塞は、全世界における最多の死因だ。冠動脈疾患と診断されれば、抗血小板薬は治療の要であり、ただちに投与される。

 冠動脈疾患の血行再建術として、カテーテル治療が広く行われ、本邦では年間26万件以上が施行されている。カテーテル治療で、多く使用されるのがステント留置である。金属製のステントが血流にさらされると血栓が形成されるため、ステント留置が行われると抗血小板凝集を強力にする、すなわち2種類の抗血小板薬が投与される (DAPT:Dual Anti-Platelet Therapy)。ステントの金属部分は次第に内皮細胞に覆われ、血栓形成回避されるようになる。現在、ステントの表面に細胞増殖抑制作用をもつ薬剤を塗布した薬剤溶出性ステント (DES:Drug-Eluting Stent) が多く使用されている。DES使用後に、内皮修復にどの程度時間がかかるか、DAPT投与期間の妥当性については、様々な臨床試験と議論が継続中である。

 ステント留置後の DAPT については、アスピリンと ADP 受容体 P2Y12 阻害薬のクロピドグレルが最も検証され、世界的に評価の高いコンビネーションである。しかし、日本人ではクロピドグレルの効果が不十分であるPM の頻度が欧米に比べて高いため、最近本邦ではクロピドグレルに代わってプラスグレルを使用する頻度が増している。特に急性冠症候群の際のステント治療後は、プラスグレル+アスピリンが日本で第 1 選択である。

2) 脳梗塞後

 脳梗塞の臨床病型には、ラクナ梗塞、アテローム血栓性脳梗塞、心原性脳梗塞があり、このうち心原性脳梗塞の予防(再発防止)には、その多くが心房細動が原因であることから、抗凝固薬が投与される。一方、ラクナ梗塞やアテローム血栓性脳梗塞、あるいは脳血管の狭窄がある場合には、予防(再発予防)に抗血小板薬が投与される。

 本邦では脳梗塞の再発予防目的では、臨床試験で証明されたシロスタゾールをアスピリンよりも優先する場合も多い。また内頚動脈狭窄症に対しては、カテーテル治療(主にステント留置)が行われることも多く、冠動脈疾患で2種類の抗血小板薬による治療 (DAPT) が推奨されている。

 

 

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