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2020年10月 4日 (日)

Clinical 抗血栓薬多用時代に歯科医師が知っておくべきこと ②

続き:

1. 止血・凝固のメカニズムと抗血栓薬

 まず、生体における止血の機序を述べる。血管壁が傷害されると、血管内皮下に存在するコラーゲンが血液中に露出することをトリガーとして、血小板の凝集が開始さっれる(1次止血)。次に凝固因子の連続的な活性化により、血小板凝集をフィブリンが覆い2次止血が完成される。

 抗血栓薬は、抗血小板薬、抗凝固薬、血栓溶解薬の3種類に分類される。このうち、血栓溶解は注射製剤で、急性期使用に限定、抗血栓薬としては抗血小板薬および抗凝固薬が頻用されている。2012年時点で、本邦で抗凝固薬は100万人分、抗血小板薬は600万人分が服用していると推定されたが、現在ではさらに服用者数は増加している。

 次に、これら抗血栓薬を使用目的別に述べる。日本循環器学会からのガイドラインも参照してください。

日本循環器学会:循環器疾患における抗凝固・抗血小板療法に関するガイドライン(2009年改訂版)。2015年10月更新版。

2. 抗血小板薬

 抗血小板薬は、血小板の活性化を抑制することにより、動脈における血栓の予防に用いる。アスピリンは、血小板の COX (シクロオキシゲナーゼ)-1を抑制し、トロンボキサン A2産生を抑制することにより効果を発揮する。アスピリン以外に、ADP (アデノシン二リン酸)による血小板凝集を抑制する ADP 受容体(P2Y12)の阻害薬が汎用される。チクロピジンが長く使用されていたが、肝機能異常ヤ血小板数低下などの血液検査異常を認めることが多く、現在では改良型のクロピドグレルが最もよく使用されている。クロピドグレルは、肝臓でチトクローム P450 (CYP)により代謝され抗血小板作用を発揮するプロドラッグである。――プロドラッグ:体内あるいは目標部位に到達してから薬理活性をもつ化合物に変換され、薬理効果を発揮(活性化)する薬剤。

 CYPの中でも CYP2C19の影響が強く、その遺伝子多型とクロピドグレルの反応性の関与が示唆されている。CYP2C19の遺伝子解析で代謝酵素活性が乏しい poor metabolizer (PM)群が同定され、欧米に比べて日本人は PM の頻度が高いと報告されている。他にP2Y12阻害薬として、プラスグレル、チカグレロルがある。プラスグレルは CYP2C19を介さず、効果の発現が早く、個人差が少ない特性がある。

 また、それ以外の抗血小板薬としては、細胞内 cyclic AMP濃度を上昇させるシロスタゾールがある。次に抗血小板薬が必要な病態について述べる。

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