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2020年10月28日 (水)

人間と科学 第317回 今と似ていない時代 (1) ①

中川 毅(立命館大学古気候学研究センター長)さんの研究文を載せる。 コピーペー:

 農耕の起源と気候変動

 

 今からおよそ1万1700年前、それまで寒かった地球が突然暖かくなった。過去に何度も存在したいわゆる「氷期」のうち、最後の1回が終わりを迎えたのである。それから現在までの時代を、地質学の用語で「後氷期」あるいは「完新世」と呼ぶ。多少の変動はあるものの、基本的には温暖で暮らしやすい。安定した社会を維持するのに適した穏やかな時代である。

 動物として私たち人類(ホモ・サピエンス)は、20~30万年前にアフリカの片隅で生まれた。それから長い間、ホモ・サピエンスは地上の生態系の主役ではなかった。だが最後の氷期が終わるころ、私たち祖先はそれまでとは違う生活の技術を編み出し、そのことをきっかけに、地表の景観を作り替えるほどの繫栄を手に入れていった。

 ここで言う「新しい技術」とは、農耕と定住のことである。農耕によって食糧の生産性は飛躍的に向上し、余った食糧を分け合うことで共同体の中の職能分化が可能になった農地の近くに定住するようになったことで、富の蓄積も可能になった。収穫から逆算して計画を立てることの必要性から、演繹的かつ定量的な思考が強化されていった。複雑さと豊かさを増した社会からは、生産に直接関与しない、芸術家や支配者といった新階級も生まれた。こうした流れは形を変えながら、基本的には現代に至るまで受け継がれ、発展を続けている。

 一方、ホモ・サピエンスの歴史は、農耕以前の狩猟採集の時代が全体の95%以上を占める。農耕を開始したのは、人類史の最後のほんの一瞬のことにすぎない。私たちの祖先はなぜそれほどの長い時間を、農耕をおこなうことなく、見方によっては「原始的な」状態のままで過ごしたのだろう。

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