Clinical 抗血栓薬多用時代に歯科医師が知っておくべきこと ④
続き:
3) 下肢閉塞性動脈硬化症 (PAD:Peripheral Artery Disease)
下肢の動脈は、上肢に比べ動脈硬化に罹患しやすく、狭窄・閉塞をきたすことが多い。症状としては、ある程度の距離を歩くと過疎筋肉痛を生じ、立ち止まると軽減するが、再び歩くと痛みを生じる間欠性跛行という特有の症状をきたす。
本症では、血行再建術として、バイパス術やカテーテル治療が行われている。ステント留置後には、DAPT が行われる。また、保存的治療として通常抗血小板薬が投与されるが、PADの国際ガイドライン (TASC Ⅱ)では、シロスタゾールを第一選択薬として推奨している。
4) その他
高齢化により大動脈弁狭窄症が激増している。80歳以上になると、開心術である大動脈弁置換術は侵襲度が高く、施行できない場合が多い。2013年以降、そういった患者に、カテーテルによる TAVI (経カテーテル的大動脈弁留置術)が安全に行われている。TAVI 後の血栓予防には、抗血小板薬2剤 (DAPT)が標準的に用いられている。
3. 抗凝固薬
抗凝固薬は、基本的に血流がゆっくりとした部位での血栓予防の目的で使用。心房細動、静脈血栓、機械弁置換術後などに用いられる。抗凝固薬としては、古くから凝固因子活性化に必須であるビタミン K の阻害薬ワルファリンが使用されてきた。しかし、ワルファリンは半減期が長く、食事や併用薬の影響を受けやすく、代謝に個人差が大きいことから容量調節が容易ではなかった。
これらの欠点を補う目的で、トロンビン阻害薬のダビガトラン、次いで凝固因子 Xa の阻害薬リバーロキサバン、アピキサバン、エドキサバンが開発、本邦でも2012年から続々と上市された。現在この新規抗凝固薬は、直接経口抗凝固薬 (DOAC:Direct Oral Anti-Coagulant)と呼ばれている。
1) 心房細動
不整脈の一種である心房細動は、加齢とともに頻度は増加、本邦でも2040には人口の1%が罹患すると予想される。心房細動は、心房内で血栓を形成し、全身に血栓症を引き起こす。特に心原性脳梗塞は、脳血栓の中で最も予後不良である。心房細動に対する抗凝固薬の適応は、必ずしもすべての心房細動患者ではない。
心原性脳梗塞の危険因子として、CHADS2というリスクスコアが用いられている。心不全、高血圧、高齢(75歳以上)、糖尿病、脳卒中/ TIAの既往(この項目のみ 2 点)の 5 項目で層別化している。この点数が上がるほど心原性脳梗塞を起こしやすく、2点以上では投与すべき、1点では投与を考慮となっている。
ただし、これ以外の危険因子として、年齢(65~74歳)、心血管疾患(心筋梗塞既往、大動脈プラーク、末梢動脈疾患など)、女性などについても、投与可とされ、→ CHA2DS2-VASc スコアが用いられることも多い。
« Clinical 抗血栓薬多用時代に歯科医師が知っておくべきこと ③ | トップページ | Clinical 抗血栓薬多用時代に歯科医師が知っておくべきこと ⑤ »
「日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事
- Report 2023 感染症根絶 ④(2023.11.30)
- Report 2023 感染症根絶 ③(2023.11.28)
- Report 2023 感染症根絶 ②(2023.11.24)
- Report 2023 感染症根絶 ①(2023.11.15)
- Science 糖尿病における歯周病 ~基礎研究からその問題点を考える~ ⑦(2023.11.11)