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2020年11月29日 (日)

人間と科学 第318回 今と似ていない時代(2) ②

続き:

 あくまで想像だが、読者の皆さんの中にも「過去の地球には4回の氷河期があった」という認識をお持ちの方は多くいらっしゃるのではないだろうか。

 じつは、四氷河期説は今では完全に否定されてしまっている。決め手になったのは、1960年代の後半から急速に発達した、深海の堆積物の研究だった。深海の泥は、長時間をかけてゆっくりと積み重なって地層を作る。地層の中には微生物の化石など、過去の様子を記録した「手がかり」が含まれていて、これを掘り出して分析すれば、過去の地球がどのような姿を変えていったか、時系列に沿って復元することができる。

 特に「有孔虫」と呼ばれる小さな海の生き物は、貝と同じような炭酸カルシウムの殻を作るため、泥の中で化石として残りやすい。その殻に含まれる酸素には、質量数16~18までの同位体、即ち化学的な性質は同じだが、重さだけが僅かにちがう原子がある。これらのうち、いちばん重い「酸素18」の比率が、当時の地球の温度を知るための重要な手がかりになるのである。

 酸素を含む物質は炭酸カルシウムだけではない。海の単なる「水」も、酸素と水素の化合物であるから酸素を含んでいる。その酸素に重さの違いがあるため、水にも僅かに重いものと軽いものがある。ところで重い水は、重いというまさにその理由のせいで、蒸発しにくいという性質を持っている。そのため、海から蒸発した水蒸気の中には、海水と比べて軽い水が多くなっている。

 地球に氷期がやってくると、この軽い水が雪になって陸地に降り積もり、やがて巨大な氷河に成長してゆく。軽い水が選択的に取り除かれるため、残された海の水は、ほんのわずかではあるが「重く」なる。有孔虫の殻を作る酸素は海水から得られるため、この時代の有孔虫の殻も、水と連動して同様に重くなるのである。

 

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