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2020年11月 3日 (火)

Science 口腔環境を支える唾液研究 ④

続き:

2) 口腔内 pH モニタリング

 安静時耳下腺唾液と顎下腺唾液の pH を比較すると、顎下腺唾液のほうが高いことが報告されている(Schmidt-Nielsen)。異なる唾液腺からの唾液 pH (重炭酸塩濃度)には差があり、その唾液も分泌速度によって変化し、到達量が口腔内各部位で異なっていれば、局所における pH も当然異なってくることが考えられる。

 渡部(筆者)らは口腔内の異なった部位でpH の変化を検討。唾液クリアランス率の異なる下顎前歯部舌側 (LALi) 、上顎臼歯部頬側 (UPB)、上顎前歯部唇側 (UAB) を測定部位として、15分間の安静状態後、酸性清涼飲料水 (pH3.1) 15ml で洗口させた後の pH を同時測定した。その結果、刺激後の変化は各々の部位で異なる回復を示した。即ち LALi においては数秒で安静時の pH に回復したが、UAB と UPB はともに洗口30分後ではもとの pH に回復しない。これは、UABには唾液が自然には到達いにくいことを示している。そして耳下腺唾液は開口部付近、即ち口腔後方のクリアランスに寄与していることが考えられる。

 本研究結果は Dawes や Weatherell らが報告した唾液クリアランスの口腔内部位特異性を確認するとともに、各部位の pH も同様に変化していることを示唆したものであった。

 

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