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2020年11月 5日 (木)

Science 口腔環境を支える唾液研究 ⑥

続き:

 

4. 唾液と歯の関係(脱灰・再石灰化)

 エナメル質の結晶、ハイドロキシアパタイトにはカルシウム、リンなどのミネラルが多く含まれている。歯は普段口腔内で中性の唾液に保護されており、唾液中のミネラルも飽和状態にある。しかし唾液が酸性になると、唾液中のミネラルの溶解度が上昇することから前後以下に、中性状態よりは唾液中に溶解できるミネラル量は多くなる。唾液にとってはミネラルが不足、不飽和状態となり、これを修正するためにはエナメル質中のミネラルが唾液に溶解して飽和状態を保とうとする現象、脱灰が起こる。

 即ちハイドロキシアパタイト [Hydroxyapatite:Ca10(PO4)6(OH)4] の結晶の Ca2+、PO43-、OH- はエナメル質表層の唾液中各種微量元素と化学的に置換する。たとえばCa2+には Mg2+、Sr2+など、PO43-には HPO42-、CO32-、など、OH- には F-、Cl- などが置換しやすい。Mg2+がCa2+と、CO32- が PO43- と置換すると結晶は酸に溶解しやすくなり、OH- がF- と置換すると耐酸性が強まるといわれている。

 これらの反応は周囲の pH 環境により可逆的に進行する。即ち Ca10(PO4)6(OH)2+8H+ <=>10Ca2+ + 6HPO4 2- + 2H2O の可逆的な反応で、pH が5.5以下になるとこの反応は右に進み、脱灰を生じ、pHが中性に移行するに従って、脱灰は停止し、Ca2+、HPO42- イオンが供給されると反応は左に進み、再びハイドロキシアパタイトやその他の結晶が補われる。

 これが再石灰化と呼ばれる現象だ。歯は脱灰・再石灰化を繰り返すことにより、フッ素が歯質に取り込まれ、次第に耐酸性を増していく。

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