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2020年11月 6日 (金)

Science 口腔環境を支える唾液研究 ⑦

続き:

5. 酸触症について

 酸性状態が長く維持されると酸触症が起きてしまうが、通常では酸性飲料水を口に入れると、安静時の約10倍の唾液(3ml/分、pH 7~8)が一瞬のうちに口腔に分泌され、嚥下され、口腔内は希釈されるので、唾液 pHも一瞬のうちに酸性から中性を通り越してアルカリ性にまで変化する。したがって、試験管の中で酸性の液体に歯を浸すのとは違って、唾液の自己防衛が通常範囲内の生活者には酸触症はきわめて起こりにくいといってよい。

 酸触症の起こる場合は、酸性飲料水をちびりちびり長時間飲む習慣の人、マイ梅干しを持ちランキング中に梅干を5~6個をなめ続ける、あるいは就寝前に酸性飲料水を常飲する人などの想定外生活者、あるいは高齢者のドライマウス、根面露出象牙質、頸部X線療法を行った人、反芻癖を持つ人などには生じる可能性が高くなる。

 もしそうでなければ、これだけ清涼飲料水が飲まれている時代、酸触症はもっと大きな問題になっていることが考えられる。

 したがって以前、「食事した後は歯が溶けやすい状態にあるのでしばらく経ってから歯を磨きましょう」と流布されたことがあったが、「溶けやすい状態にある」は、酸性液体にドボンと歯を浸した実験で得られた結果を基にしており、ヒトの通常の口腔では溶けやすい状態にはなりにくく根拠が不十分である。

 しかしこの呼びかけ一時独り歩きし、幼稚園などで混乱を来した痛い経験がある。

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