Clinical 口腔内スキャナー~補綴装置製作(精度・可能性)~⑤
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4. 口腔内スキャナーとインプラント治療
口腔内スキャナーはインプラント治療においても活用範囲が広く、アドバンテージを持っている。従来の間接法による治療法の流れと比べて口腔内スキャナーを用いたデジタルワークフローは、インプラントの埋入計画からサージカルガイドの製作、補綴装置製作の流れまで導入の利点が高い。
口腔内スキャナーを用いたインプラント治療のワークフロー
a:口腔内スキャニングデータと CT データを重ねてインプラント埋入位置の設計を行う。
b:埋入設計を基に3Dプリンターでサージカルガイドプレートを製作し口腔内に試適してみる。
c:サージカルガイドプレートを用いてインプラントを埋入。
d:埋入して 10週間後に上部構造製作のためスキャンボディを装着してスキャニングし、補綴装置のモデリングを行う。
インプラントの埋入ガイドを製作するには、従来法で印象採得して製作した石膏模型をスキャニングしてCTデータとマッチングを行っていたが、直接口腔内をスキャニングしたデータがあれば、模型製作することなくサージカルガイドの設計、製作が可能である。また補綴装置製作時のスキャニングデータを用いれば、術前の埋入設計と埋入後の位置関係を術後に CT を撮ることなく比較することもできる。上部構造の製作のための印象法も、シリコーン印象のオープントレー法は操作が煩雑で、手間がかかる。クローズトレー法では印象キャップのズレを確認することができないという問題もあった。それが、口腔内スキャナーによるスキャニング方法では、短時間で簡単・正確に行える。3歯連続冠でも完成したジルコニア冠は口腔内での適合は良好で、隣接面コンタクトは無調整で短時間にセットできた。
筆者(野本)はこれまでにスキャナーを用いて100症例以上のインプラント治療を経験したが、直接法で製作した上部構造は間接法で製作したものと比べて明らかに口腔内での調整は少なく、チェアタイムが短縮している。インプラント治療において、治療計画~上部構造製作までのデジタルワークフロー化の恩恵は天然歯より大きい。口腔内スキャナーを診療室に導入するというデジタル化だけでもデジタリゼーションの効果は大きいものです。
上部構造製作のために口腔内スキャナーでスキャニングしたデータと、埋入設計時の CT データを重ねると、埋入設計と埋入後の詳細な誤差検証が可能である。埋入誤差は中間欠損では 0.5mm 以下であることがほとんどで、直接法で製作するサージカルガイドプレートの精度は高い。
5. 口腔内スキャニングデータの応用
口腔内スキャナーは口腔内のデータをデジタル化して保存できることが一番のメリットで、デジタルデータを用いて異なる方法で補綴装置を製作することが可能である。口腔内スキャニングデータを用いて鋳造冠を製作するには、WAX パターンをミリングすると同時に、比較のためジルコニアをミリングした。ミリングした WAX パターンは埋没して鋳造を行った。鋳造して仕上げた金属冠を口腔内に試適するとマージン適合、隣接面コンタクト、咬合コンタクトは良好であった。しかし内面適合をブルーシリコーンで調べると、同時に製作したジルコニア冠と比べて WAX パターンは内が粗造で厚みが均一でない、マージン部に厚みがあった。これらの結果、WAX をミリングするには均一に削ることが困難、パターンのマージン部分は薄いため、広がってしまう可能性があることが分かった。この方法で製作した冠の内面適合性については問題が残る結果となった。
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