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2020年11月 1日 (日)

Sciene 口腔環境を支える唾液研究 ②

続き:

1. 口腔内の汚れを希釈するメカニズム

 唾液を口腔内の環境因子として用いる研究は、Lanke(1957年)の研究がスタート。これは「糖液が口腔に入ると、その刺激によって一定の速度で唾液が分泌され、それと同じ速度で口腔外への排出(嚥下)が起こる」というものであった。この研究がベースとなって、その後しばらく口腔を糖液で洗口後、継時的に唾液を採取して糖の消長時間を測定し、個人の唾液クリアランス能を判定することが臨床で行われていた。

 1983年 Dawes は Lanke に代わる唾液クリアランスの新しいモデルを発表した。この論文は三大唾液腺開口部を源泉として口腔内に分泌された唾液が口腔を巡り、やがて嚥下される過程を不完全なサイフォンに例えた図がある(図面 略)。すなわち生理的に起こる嚥下を境に、口腔内の唾液量は嚥下直前で最高値に達し、嚥下直後で最低値となり、この繰り返しによって口腔が希釈されることを示した。Dawes はこの希釈能率に関わる因子として、安静時唾液分泌速度、嚥下直前・直後に口腔内に停滞する唾液量と一回嚥下量、味覚の順応による分泌量の変化、咀嚼や味覚刺激による唾液分泌速度、初めの砂糖の量などの因子を取り上げ、それぞれの因子を変化させた時に口腔に含んだ糖濃度がゼロになる時間をCTでシミュレーションした。

 その結果、安静時唾液分泌速度と嚥下直前・直後に口腔に停滞する唾液量が最も重要な因子となることが示された。そして唾液分泌速度が速いヒトほど嚥下回数、1回の嚥下量が多くなり、嚥下直後の口腔内唾液量が少ないヒトほど希釈効率が優れていることを明らかにした。

 しかし口腔を均一な器として考える Dawes のモデルは、世の中のう蝕が減少してくるにつれ、う蝕が部位特異的に発生していることが明らかになると、説明が難しくなってきた。

 1985年よりカナダの Manitoba 大学 Colin Dawes 教授の下で研究する機会を得た渡部(筆者)は、このヒトの口腔の希釈システムの解明、およびそれ以後の唾液研究に携わることができた。

 

 

 

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