「容量市場」とは何か ⑥
続き:
拙速かつ問題多き日本の容量市場
日本の容量市場を簡単に説明する。応札できる電源は、固定価格買取制度 (FIT) の支援を受けている再生可能エネルギーと売電しない自家発電を除く、ほぼすべての電源となる(表 後)。相対取引で売電している発電事業者も容量市場に参加できる。7月に募集された容量は2024年度分なので、現在休止している原発も再稼働を見越して応札することもできる。買い手は電力広域的運営推進機関(OCCTO) のみとなる。
第1回目に募集する容量は、合計約 1.8 億 kW (1 億7653 万kW) だが、ここから FIT 電源 0.2 億kW を差し引いた約 1.6 億kW が入札対象となる。上限価格は 1万4138円/kWと決定。これは、新設LNG火力発電所を 40年で投資回収した場合の費用をベースに指標価格 9425円/kWを算定し、その1.5倍である。仮に約定価格が指標価格と同じ 9425円なら 1兆5000億円、6000円でも約 1兆円という巨大な市場規模となる。2019年度の販売電力量8632億kW時で割ると、1~1.7円/kW時の負担増となる。
ただし、発電と小売の9割近くを占める旧一般電気事業者(旧一電)は、両者が一つの会社内であるため、「右手」(小売部門)から「左手」(発電部門)への費用移転でしかないが、2016年4月の電力小売全面自由化後におよそ 600社が誕生した新電力にとっては、ほぼ純粋な負担増となる。新電力のシェアは約16%だから、1600億円から2400億円もの費用が、新電力~旧一電への移転となり、競争上、旧一電が有利な条件となる。
例えば、再稼動している関西電力大飯原発(3号機・4号機とも118万kW)の場合、前記の約定価格なら1年で一基あたり 70億円~ 110億円もの容量収入との計算となる。文字どおり「棚ぼた利益」といえよう。こうして見ると、日本の容量市場の問題点が五つに整理できるだろう。
以下 次に。
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