ジェネレーション・レフト宣言 ③
続き:
ところが、これ以上環境を犠牲にすることは、資本主義と民主主義のペアそのものさえも脅かすことになりかねない。要するに、このトリレンマをもう一度真剣に考えないといけないところに、私たちは来ている。
危機を前にした主流派の答えは何か。トリレンマが存在しないように振舞うことである。いまや技術革新によって、「経済」と「環境」と「民主主義」のすべてが両立できるかのような「緑の経済成長」がまことしやかに謳われているのだ。そして、そのような言説が、左派・リベラルのあいだでも、未来の資本主義の可能性として、好意的に論じられるようになっているのである。勿論、「緑の経済成長」の発想は、反緊縮グリーン・ニューディールとも相性がいい。
だが、「緑の経済成長」路線は、「環境危機のトリレンマ」を無視する限りで、十分な解決策にはならない。というのも、経済成長と二酸化炭素排出量のデカップリング(切り離し)を、1.5℃目標を実現できるような十分な速度で達成することは、現実には極めて困難だ。経済成長により経済規模が大きくなればなるだけ、より劇的な効率化を進めなければ、二酸化炭素排出量減らすことができなくなるというジレンマもある。
さらに、生産という物質的過程の効率化には、克服できない限界が存在する。また、資本主義の経済成長が石油や石炭といった化石燃料の大量消費に完全に依存していた事実を考えるなら、長期停滞から先進国の経済を救いながら、2050年までの脱炭素化を実現するのが、机上の空論であるのを理解するのは、それほど難しくないはずだ。
「緑の経済成長」論の問題点は、「通常運転に戻る」ことが破壊的だといいながら、EVや再生可能エネルギーのような技術だけで、「環境危機のトリレンマ」を突破できると主張することにある。それでは、生活の中身は「通常運転に戻る」ことと大差がないのだ。勿論、そのような甘い話は、現実にはうまくいかない。
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