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2020年12月27日 (日)

ネットワーク型ビジネスモデルと働き方の現在 ⑧

続き:

   SDGs と社会契約

 競争に歯止めをかけ、社会に公正な配分をもたらす。これがSDGsの柱だ。企業は利潤追求によって社会的価値を生み出すという立場にある。だが、ネットワーク型ビジネスモデルが組織効率の最大化を追求するからこそ、サプライチェーンの下流に位置する企業や労働者の社会的価値を棄損していまう。これを止めることが企業や各国に難しいからこそ、国連が乗り出しているのだ。

 労働をめぐる様々な問題の根本的な解決のためには、各国が協力してネットワーク型ビジネスに歯止めをかけ、これまでとは違う方向に導いていかなければならない。問題はその認識がどこまで共有できるかということ。「SDGsで儲ける」どころではない。どのように競争力の源泉を変えていくことができるのか、ということが日本のみなrず国際社会において喫緊の課題となっているのである。その道のりはたやすく越えられるものではないだろう。

 ここでいくつかの取り組みを紹介します。

 欧州では 2024 年までに法廷最低賃金を平均賃金の 2/3 相当に引き上げる目標を掲げている。こうした政策は企業の人件費に関わる経費を標準化して競争力の源泉から除外するという効果をもたらす。平坦に言えば、人件費を引き下げるという競争に歯止めをかけることができる。その意味で、SDGsと同様に効果的だ。プラットフォームビジネスを独禁法の対象とすることで、ネットワークの中核にある企業の力を分散させるという試みも進行中。

 請負元に従属的な請負労働者(dependent contractor)の交渉力を高めることへの提案も行われている。経済開発協力機構(OECD)は、毎年発行している「雇用アウトルック」の2019年版でそうした労働者が自らの権利を守り、企業と交渉するための新しい労働者の組織を結成する必要性を提言している。このように、様々な手段でネットワーク型ビジネスがもたらす二極化の是正と公正な分配の促進が試みられている。これらの施策は、しかしながら断片的なものだ。もっとも重要なことは、ネットワーク型ビジネスが構造的にさまざまな労働問題を内包していて、持続可能な経済成長にとっての障害となっているという構造を理解することだ。その上で、ネットワーク型ビジネスモデルに変わる成長の糧を考案しなければならない。それが、企業、企業で働く労働者とその家族などすべての人が合意した新しい社会契約(Social Contract)にならなければ持続可能な未来の達成に赤信号がともってしまうのである。

 

 

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