ネットワーク型ビジネスモデルと働き方の現在 ④
続き:
プラットフォームビジネスと働き方のグラデーション
プラットフォームビジネスがネットワーク型ビジネスの一類型であることから、その競争力の源泉は、ネットワークで最大化された組織効率だ。具体的には、戦略立案能力とネットワーク内の連携力、そしてコストをどれだけ削減するのかということ。こうした競争力の作り方は当然のことながら、労働者の働き方に大きな影響を与えることになる。それは、次のような形として現れる。
中核的な役割を担う労働者は「日本的雇用慣行」もしくは「メンバーシップ型雇用」に近づき、周縁に位置して下請け的役割を担うほど「ジョブ型雇用」や「請負型労働」に近づく。「ジョブ型雇用」とは、職務記述書によって限定的に示されることだけを担うものであり、「請負型労働」とは仕事単位に契約で担うものである。どちらも、戦略立案能力は期待しない。こうした中核、非中核の働き方を企業の内側と企業の外側に分けて整理する。
水平的・垂直的提携関係における労働者管理モデル
<管理パターン>
■ 企業内
① 専門性と同時に複数の部門異動により広範な知識と経験の獲得を促すとでグローバルに活躍できる中核的業務に携わるパーマネント従業員➡長期
② 事業活動にとって継続的に必要とする専門性を高める従業員➡長期
③ 地域限定で異動がなく①と②を支えるパーマネント従業員➡長期
④ 経営環境の不確実性に対応するためのテンポラリー従業員➡短期
⑤ 試験的事業実施のための期間契約➡短期
■ 企業外
⑥ M&Aによる買収と売却(垂直的提携)➡経営環境による
⑦ 研究開発等かかわるパートナー企業(水平的提携)➡経営環境による
⑧ 人材ビジネス企業を活用したアウトソース(垂直的提携)➡人材ビジネス企業との長期間のパートナーシップ
出所:著者(山崎)
企業内でみれば、①から③までが日本型雇用慣行と類似し、④と⑤はジョブ型雇用に相当。⑦はネットワークのなかで中核的な役割を担う企業のパートナーとして同等の位置にある。⑥と⑧はネットワークのなかでコスト削減を担う。④と⑤、そしてコスト削減を担う⑥と⑧は、戦略立案や連携構築力を期待されてはいない。あくまでも、与えられた役割、つまり「ジョブ」を効率良く、的確にこなすことが求められる。だからこそ、外部市場に連結させることで、コストがもっとも低く、品質がもっとも高い企業や労働者が絶えず選択できるようにする。ネットワーク型ビジネスにとって、いつでも取り換えがきく部分である。そのため、ここで働く労働者の絶えず引き下げ圧力を受ける。企業側にとってコスト削減につながるが、労働者側にとっては、低い収入を強いられることなのだ。
こうした整理で明らかになることは、ネットワークに参加する労働者の管理は画一的なものではなく、グラデーションがあるということである。日本では欧米企業の働かせ方は「ジョブ型雇用」になっているという考え方がある。だから「日本型雇用慣行」を廃して「ジョブ型雇用」に移行することが正しいのだということになる。だが、そんな単純な話ではない。
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