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2020年12月29日 (火)

人間と科学 第319回 今と似ていない時代(3)―②

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 氷期のリズムに関する人間の理解が大きく進展したのは、1976年のことだった。研究者たちは、深海の泥に含まれる微生物の殻を大量に分析し、データを数学的な手法で検証した。それによって、過去の気候変動はいくつかのシンプルな周期の組み合わせとして理解できることをつきとめた。

 たとえば最近の100万年に注目すると、氷期と氷期の間の温暖な時代(間氷期と呼ばれる)は、驚くほど規則正しく10万年周期で到来した。もっと古い時代には、10万年よりも4.1万年周期のほうが卓越していたようである。またすべての時代において、さらに短い2.3万年の周期が加わることで、気候変動のパターンはさらに複雑な構造になっている。

 天気といえば、伝統的には予測が困難なものの代表格だ、気まぐれであることの比喩にすら使われる。にもかかわらず、地球の気候変動はなぜ、これほど規則正しくリズムを刻んでいるのだろう。

 地表の出来事は(転機に代表されるように)きわめて不規則である場合が多い。それに対して、宇宙の出来事はしばしば物理的にシンプルであり、その拳動も整然としている。惑星や衛星の運行は、基本的にはいくつかの方程式だけで記載できてしまう。だからこそ、月の満ち欠けや太陽の運行は、「暦」や「時計」の本質部分に使われる。10万年に一回、規則正しく氷期を終わらせる気候変動の「時計」は、じつは宇宙空間に存在していた。

 地球は太陽の周りを365.25日の周期で公転している。公転軌道はおおむね円であるが、厳密にはケプラーの第一法則に従って楕円形になっている。この楕円の「長細さ」は、時代によってリズミカルに変化する。

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