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2020年12月15日 (火)

ジェネレーション・レフト宣言 ⑤

続き:

世代論としての左派ポピュリズム

 左派ポピュリズムの台頭について考えるために役立つのが、「世代」問題だ。何故なら、左派ポピュリズムを主に支えているのは、若者たちだからである。

 ブレグジットやトランプ現象の分析においては、しばしば都市と地方の対立や階級的対立が指摘されてきた。つまり、リベラルで多文化主義的な都市部の富裕層と、産業が廃れた地方で経済困窮に喘ぐ大衆という対立である。

 だが、ますます重要になってきている要素が「世代」だと指摘するのが、レスター大学で教鞭をとるキア・ミルバーンだ。一例として、2019年英国の総選挙における年齢別の投票行動を分析したグラフがある。それによると、若い世代ほどコービンの労働党へ投票した確率が高く、年齢が高くなるにつれて、保守党に投票する確率が上がっていくことがはっきりとわかる。

 この傾向はイギリスだけではない。若者の左傾化がとりわけ顕著なのがアメリカだ。当時20代にして、下馬評を覆して、ニューヨーク州から選出された民主党議員アレクサンドリア・オカシオ=コルテスは有名だが、彼女はもともと「アメリカ民主社会主義者 Democratic Socialists of America」(DSA)という政治団体のメンバーであった。現在DSAは多くの若手薪メンバーを獲得しており、2016年6月には6500人だった会員が、2018年9月には5万人となり、その平均年齢も2013年の68歳~2017年には33歳にまで低下しているという。

 「民主社会主義」という言葉からもわかるように、若い世代は、資本主義を疑問視するようになっている。資本主義よりも、社会主義を望ましいと考える若者の方が多いというデータもある。そのため、「ミレニアル世代」(1981年~1996年生まれの世代)と「Z世代」(1990年代後半から2000年以降生まれ)は、「ジェネレーション・レフト(左翼世代)」と呼ばれるほどだ。反資本主義の動きは、ソ連崩壊後に長期にわたって大きく停滞していたが、いまや、ソ連を知らない若い世代が立ち上がり、新しい社会運動や政治運動を展開するようになっているのである。

 この事実一つをとっても、欧米の「左派ポピュリズム」と日本の「反緊縮ポピュリズム」をめぐって、重要な違いが浮かび上がってくる。まず、日本の反緊縮派は、社会主義をまったく志向していない。むしろ、危機を前に、社会主義のような「空想」を語ることを断固として拒否している。そして、人々の苦しみを和らげるために、経済成長の最大化を目指している。

 さらに、日本の反緊縮派は、ミレニアル世代よりも一回り以上上の世代、「就職氷河期世代」に近い。「ジェネレーション・レフト」ではないのだ。この世代は、「ソ連崩壊」と「バブル崩壊」という二重の経験を若い頃にしていて、その後の「新自由主義」の最盛期を生きてきた世代である。それゆえ、彼らにとっては、「社会主義」=ソ連であり、「経済」と言えば、バブル崩壊前の時代の記憶が強い。そして、新自由主義への代替案はない(TINA)、と刷り込まれて暮らしてきた。その結果が、反緊縮派の反社会主義・経済成長路線なのである。

 それに対して、海外で「左派ポピュリズム」の社会主義路線を支えている「ジェネレーション・レフト」は、さらに下の世代である。彼らの政治的意識の形成に決定的だったのは、2008年のリーマンショックである。金融資本主義の暴走が引き起こしたバブルの崩壊は、日本でも派遣村という形で非正規労働者の問題を可視化したように、世界中で新自由主義の矛盾を露呈させたのだった。

 新自由主義改革によって、若い世代にとっての安定した生活を保証してくれる正社員の雇用はどんどん失われていった。さらに、学費の値上げによって、彼らの多くが多額の学生ローンを抱えている。しかも、経済は長期停滞中。親の世代よりも豊かになるという見込みがないという厳しい現実に、彼らは直面している。実際、ミレニアル世代は、この数百年間で初めて、前の世代よりも生涯収入が低くなる世代だと言われている。

 一方、彼らの親の世代は、新自由主義の流れを受け入れながら、金融資本主義のもとでの資産形成を行ってきた。年金や不動産所有など、彼らは自らの資産を積極的に運用しているため、株価に象徴される金融資本主義と利害を共有している。

 しかし、いくら株価が好調だとしても、実体経済の停滞を若者たちは体感している。そのため、運用するための資産をそもそも持たない若い世代は、上の世代の作り上げたシステムから疎外されているという想いを強めている。要するに、若い世代と年配の世代では、「実体経済」と「金融市場」という、まったく異なる経済を見ながら生きているのであり、その違いが、「世代的分裂」を生み出している階級的条件である、とミルバーンは主張するのだ。

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