ネットワーク型ビジネスモデルと働き方の現在 ①
山崎 憲(明治大学経営学部准教授)さんの小論を載せる。「世界 12」よりコピーペー:
「働くこと」をめぐり、現在進行中の議論だ。
「AIに人間の仕事が置き換えられる」「AI、ICT技術者の育成が急務だ」「日本的雇用慣行を改めてジョブ型雇用すべきだ」「フリーランスや雇用類似労働者の権利や社会保障」「新規学卒一括採用をやめるべきだ」「非正規雇用労働者と正規雇用労働者の間の処遇格差」「所得格差とそこからくる大学進学率などの教育格差」。これらは、一見すればつながりのないことのように見える。しかし、それらはすべてネットワーク型ビジネスモデルの進展というフィルターをかけることで、同じ地平にあることがわかる。
本稿は、大多数の「ふつうの」労働者の働き方がどうなるのかということに主眼を置きながら、望ましい社会の在り方を探ることを目的とする。そのためには、弱い立場にある労働者やその家族の暮らしをどのように向上させるのかということ同様に、国内、国外を問わず企業が止むことなない競争のなかにいるということを意識しなければならない。このことに関連して、国際連合は「持続可能な開発(SDGs)のための2030アジェンダ」を2015年に採択した。これは、国境を超えた企業間の競争に歯止めをかけることで、2030年までに持続可能でより良い世界を目指すとするものである。地球環境の悪化、食料・エネルギー危機、貧困と格差の拡大、それらの原因の大きな部分に企業間の国境を超えた競争がある。日本政府も2016年に「SDGs推進本部」を設置して取り組みを始めた。ところが、「SDGsで儲ける」という内容のビジネス書が日本でみられるようになった。これは、企業間の競争に歯止めをかけるという方向と真逆だ。SDGsでさえも儲けの種にしなければならないほど、企業が競争に追い立てられているのだ。
その意味では、日本政府も同様のパラドックスの中にいる。SDGsに参加するとしながらも、その一方で世界的な競争の焦点となっているネットワーク型ビジネスの振興を進めているからである。具体的には「Society 5・0」のことをさす。 2017/12/08、に内閣が閣議決定「新しい経済政策パッケージ」では次のように語られる。
「第四次産業革命の社会実装によって、現場のデジタル化と生産性向上を徹底的に進め、日本の強みとリソースを最大限活用して、誰もが活躍でき、人口減少・高齢化、エネルギー・環境制約など様々な社会課題を解決できる、日本ならではの持続可能でインクルーシブな経済社会システムである」。
SDGsは国際連合、加盟国とその企業、国民、労働者などによる社会を未来に向けて持続させるための社会契約 (Social Contract)である。それは、環境問題、貧困と所得格差の解消といった日本にも共通する課題を根本的に解決するためのものだ。
だれもがSDGsが必要だと思いながらも、どうしても競争に駆り立てられてしまう。その根源にあるネットワーク型ビジネスとは何なのか。そこから見ていこう。
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