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2021年1月14日 (木)

キャシュレス社会のワナ ⑤

続き:

   「フィンテック」勢の狙いとは

 さて、割賦販売法の改正にあわせて考えるべきは、こうした規制緩和によって、フィンテック事業者が何を狙っているかという点だろう。

 2019年暮れのことだった。政府の規制改革推進会議のあるメンバーから、楽天の三木谷浩史会長兼社長が代表理事をつとめる「新経済連盟」が「無理筋を言っている」と教えられた。「要は、企業向けの少額短期の融資金利引き上げです」と。新経連はフィンテック事業者も多く加盟する団体である。そんな団体が、利息制限法や出資法で定められている上限金利(元本金額によって15%~20%)を引き上げてほしいと主張している、というのだ。

 2019/04/11、の規制改革推進会議の投資等ワーキング・グループで、新経連のフィンテック推進プロジェクトチームの瀧俊雄氏(「マネーフォワード」執行役員)は「フィンテックを活用した新たな金融機能の創造」と題したプレゼンテーションを行ない、以下のように説明している。

 「どうしても消費者を保護するための金利の上限というものが事業者にとっては、例えば飲食業で半分が粗利益みたいな業態がいっぱいあるわけで、そういった事業者の健全な成長を阻害するだけではなくて、場合によっては短期ですぐにお金を借りたいというニーズに対して、多分、闇金を助長してしまうような側面もあるのでhないか」

 引用部だけでは少しわかりにくいが、まとめるとこうだ。1~2ヵ月の短期融資の場合でも、金利が年換算されてしまうため、リスクに応じた融資の判断ができない。金利の制約によって、短期融資を必要としている事業者にお金が行き渡らず、健全な成長が阻害されている。又、こうした事業者が闇金を頼ることにもつながっているのではないか、と。瀧氏はそこで、上限金利という一律の規制をかけるのではなく、金利計算をすれば上限金利を超えるかもしれないが、期間にかかわらず、たとえば15%の「固定手数料」をもらうという融資のあり方も考えてみてほしい、と提案している。

 さすがに、このような上限金利規制の「骨抜き」プランがすぐに実現することはないだろう。規制改革推進会議のメンバーも「あれはさすがに無理だ」と話していた。一方で、新経連側が諦めたわけではない。関係者は解説する。「(上限金利を超える貸し付けを禁じる)貸金業法改正って言った瞬間にもう、何もできなくなってしまう。だから、新しい特例融資制度という形でアプローチしている」。その上で、手数料型の検討については「世界的にもそうなってくるはずだし、アジェンダセッティング(課題設定)としてずっと残っている。今後、議論していく」。

 「お金は貸さなければ儲からない」(日本銀行幹部)。よって、決済事業などに参入してきたフィンテック事業者が今後、注力するのは融資ビジネスだろう。すでに企業向けのみならず、個人向けでも参入は進んでいる。そして、こうした事業者はあの手この手で、自らの利益を最大化するための規制緩和を求めるだろう。

  であれば、クレジットカードの AI 審査の解禁には、やはり注意が必要だ。これが蟻の一穴となり、様々な分野で与信審査が緩くなれば、かってのような過剰与信の世界に戻りかねない。たとえば、消費者金融業に参入したフィンテック事業者が、AI 審査という「高度な審査手法」を理由に、貸金業法が定める「年収 1/3 以下」の規制の見直しを迫るかもしれない。「年収以上の上限を設けても返せるなら、もっとクレジットカードを使わせる」という発想は、容易に「返せる限り、貸せるだけ貸す」に結びつく。

 キャシュレスが便利であることは否定しない。だからこそ、事業者にはきちんと「責任」を負わせるのが規制のあり方ではないのか。便利さばかりに気を取られずに、消費者保護の視点に改めて立ち返る必要があるだろう。

     規制緩和の裏で消費者保護は後退している。

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