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2021年1月15日 (金)

Clinical 口腔癌の早期発見を目指して ~光学機器を用いた検出法~ ①

大西祐一(大阪歯科大学口腔外科学第二講座准教授)さん、中嶋正博(大阪歯科大学口腔外科学第二講座主任教授、同大学附属病院病院長)さんの共同研究を紹介する。 コピーペー:

はじめに

 近年、光エレクトロニクスとナノテクノロジーの進歩と癒合が、光テクノロジーを使った医療診断や治療に大きな変革をもたらし、医療における新しい応用が注目されている。特に消化器疾患や肺癌のスクリーニング検査における光テクノロジーと内視鏡技術の進歩はめざましく、総合病院の内視鏡による検査や治療を行う検査部は光学医療診療部という新しい診療科となっている。

 光学医療診療部では上部消化管、胃、そして下部消化管の病変において、拡大切除することなく内視鏡的に低侵襲による診断、治療を行っている。内視鏡には Narrow Band Imaging (NBI)を応用したシステムが用いられている。NBI は血液中のヘモグロビンに吸収されやすい狭帯域化された 2つの波長(青色光と緑色光)の光を照らして観察するため、病変の微小血管構築像、表面微細構造などが可視化され、通常の白色光に比べて微細な構造変化が観察できる。しかし非常に高価で装置が大きいため、歯科診療所においては実用的ではなく、口腔は直視・直達が可能で触診できるにもかかわらず、口腔粘膜病変の診断は決して容易ではない。特に表在性の癌や早期癌では硬結がみられず、診断や切除範囲の設定に苦慮する場合も少なくない。

 これまで口腔癌や前癌病変の検出法にヨード染色法などが用いられ、その有用性が報告されている。しかし、角化傾向が強い付着歯肉や硬口蓋では染色性に問題があり適応部位が限られる。さらに刺激が強く、ヨードアレルギーの患者には使用ができないという欠点もある。

 一方、口腔粘膜蛍光観察装置は、歯科の日常臨床においてチェアサイドで短時間に行える光学機器で、患者に対する負担と侵襲が極めて軽微だ。また NBI と比べて安価でコンパクトであり、操作性においてより簡便に使用できるという利点を持つ。さらに、口腔癌の早期発見および病変の切除範囲の設定において、この装置が有用であると考えられている。

 2020/04/01、からは、舌悪性腫瘍手術に用いる口腔粘膜蛍光観察機器として保険適用収載された(J200-4-4 口腔粘膜蛍光観察評価加算 200点)。

 そこで本稿では、我々が行っている口腔粘膜蛍光観察装置を用いた”病変の可視化”による診断、および切除範囲の設定について概説する。

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