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2021年1月11日 (月)

キャシュレス社会のワナ ②

続き:

   来春にも AI 審査が可能に

 ところが、政府はこうした指摘に耳を貸すどころか、より一層キャシュレスを推進するために、クレジットカード会社の自由度を高めようとしている。

 その姿勢が色濃く出たのが、クレジットカード取引のルールなどを定めた割賦販売法の改正だ。持続化給付金の問題などが重なり、注目されることがなかったが、6月の国会で、全会一致で改正案が成立した。改正法は来春にも施行され、これにより、クレジットカード会社が利用者のカード利用枠を決める診査が変わる見通しだ。

 現在、クレジットカード利用者の利用枠を決める際、カード会社には「支払可能見込額調査」が義務づけられている。年収から、家賃などの生活維持費と他社も含めたカードの年間支払い予定額を差し引いて、利用者の支払い可能な額を算定するものだ(30万円以下の範囲で利用枠を設定する場合などは調査の対象外)。この見込み額を超えるクレジット契約は原則できないことになっている。

 見込額調査は、支払い能力を超えてクレジットカードを使う人が増えたため、2008年の法改正でカード会社に義務づけられた。ところが今回の改正で、調査要件は緩和され、カード会社は AI やビッグデータを使った審査で代替することができるようになった。カードの利用暦や返済実績などを分析し、年収が低くても AI が支払い可能と判断すれば、これまでの支払い可能見込み額よりも利用枠を広げられる。政府はこれを審査手法の「高度化」と謳う。適切な審査が行なわれているかどうかは、延滞率などが一定の範囲内におさまっているかなどをもとにチェックするという。

 だが、これは「ノーチェックに等しい」と、消費者問題に詳しい「せたがや市民法律事務所」(東京都世田谷区)の三上理 弁護士は指摘する。なぜなら、クレジット会社側が AI 審査のアルゴリズムを公開することはまずあり得ず、仮に公開したとしても、政府がその問題点を指摘することは不可能に近いからだ。そのため、必然的に延滞率などをもとにした事後チェックになるわけだが、返済をしていれば、たとえ、家族や親戚が肩代わりしていたとしても、家を売り払っていても、延滞率には表れない。延滞率という指標は、貸す側のダメージをいかに低く抑えるか、というものにすぎず、利用者や利用額が増えれば、延滞率は同じでも、債務に苦しむ人は増える。

 ” AI 審査だから精度が高い”という考え方自体が「貸す側」の論理であり、利用者の保護をないがしろにしていると言える。三上氏は「債務を年収の範囲内に収める必要があるという発想を捨てていいのか」と訴える。

 東京弁護士会は改正がなされる前の今年の1月、審査手法の緩和について反対を表明。篠塚力会長(当時)は「消費者保護のため、与信の許容される上限を定めておく必要があるとした法の趣旨に明らかに反する」と指摘した。だが、国会ではこうした問題点が議論されることはなかった。

 

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