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2021年1月18日 (月)

Clinical 口腔癌の早期発見を目指して ~光学機器を用いた検出法~ ④

続き:

3. 口腔粘膜蛍光観察装置の原理

 口腔粘膜蛍光観察装置は 400~460nm の波長の青い蛍光波を口腔粘膜に照射することにより、励起された自家蛍光を肉眼的に観察できる装置で、正常口腔粘膜では青緑色の蛍光が観察される。しかし、上皮異形成や扁平上皮癌では蛍光発色が消失、暗く観察される。これを蛍光ロスという。

 ここで、上皮細胞から発する蛍光源である FAD と NADH の 2 つの補酵素の存在が細胞代謝の重要な指標となっている。FAD による自家蛍光は 450nm 照射光で、515nm の発光のピークがあり、本システムの照射により励起して観察される。一方、NADH による自家蛍光は 340nm の短い照射光に反応して、450nm に発光のピークがあるため、本システムでは NADH は観察されない。

 ところが、癌細胞や前癌病変においては、代謝活性が増加することにより FAD が FADH2 に変化して FAD 濃度が低下。そのため FAD により生じる蛍光強度が減少することにより暗く観察される。また、もう 1 つの発光源である粘膜下組織のコラーゲンも 410~470nm の波長に対して大きな蛍光を生じる。

 よって本システムの照射により励起して観察されるが、このコラーゲンも癌により粘膜下組織まで破壊されることによって、同様に経口発色の低下が起こり暗く観察される。

 さらに本システムの青色光は、毛細血管のヘモグロビンに吸収される性質を持っている。しかし、前癌病変や扁平上皮癌では代謝が亢進し、新生血管や腫瘍栄養血管が生じるためより暗く観察される。

 以上のことから前癌病変では上皮細胞内の変化により経口発色が低下、暗く映るといわれている。さらに扁平上皮癌が粘膜下組織に浸潤すると、コラーゲンが破壊されることにより、より暗く映ることになる。

 当科では 2008 年より口腔粘膜蛍光観察装置を導入し、口腔粘膜病変の診断・治療の向上に努めてきた。当時は VELscope システムを導入し用いていた。VELscope システムはFDA(アメリカ食品医薬品局)の承認を受け、口腔癌早期発見の補助や切除範囲の設定について推奨されている。その後継としては VELscope Vx が発売されており、松風からは 320g と軽量ハンディタイプのイルミスキャンが発売された。さらにオーラルック、バイオスクリーンと合わせて 4 種類が国内で発売されている。

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